生合成酵素を改変し、非天然系の抗生物質産出に成功―抗がん剤などの創薬の研究促進へ貢献:東京大学/産業技術総合研究所
(2018年8月30日発表)
東京大学と(国)産業技術総合研究所の共同研究グループは8月30日、これまで非常に困難とされていたモジュール型酵素の改変に成功し、抗真菌薬や抗がん剤などの創薬につながる可能性を秘めたアンチマイシン化合物群の新規生産系を構築したと発表した。
アンチマイシン化合物は、抗菌活性をはじめ様々な生理活性を示す、放線菌が生産するPK-NRP(ポリケタイド-非リボソームペプチド)化合物の一群。
この化合物群を作り出している生合成酵素は、酵素の肝(きも)ともいえる触媒ドメインが一つのポリペプチドに連なって存在する、いわゆるモジュール型酵素で、触媒は厳密に制御されていることから、酵素の改変によるアンチマイシン関連物質の人工的な生産はこれまで困難だった。
研究グループはこの克服を目指し、今回、モジュール型酵素の遺伝子を取得し、酵素の多様化に関する進化の様式を解析、その様式を組み合わせることによって新規モジュールをデザインし、それらを微生物ホストに機能させることによって新規PK-NRPの生産に成功した。
産出したのはPK(ポリケタイド)とNRP(非リボソームペプチド)のハイブリッド非天然型抗生物質。今後この成果をもとに、酵素法によって類縁体を簡便に生産する系がつくられ、創薬研究に貢献することが期待されるとしている。