自動的に折りたたまれるポリマー材料の開発に成功― たんぱく質の機能をまね、医療応用や分子コンピューターなどに期待:千葉大学/高エネルギー加速器研究機構
(2018年8月31日発表)
千葉大学グローバルプロミネント研究基幹の矢貝史樹教授と高エネルギー加速器研究機構(KEK)のグループは8月31日、自ら整ったらせん状の構造に折りたたまれるポリマー(高分子化合物)の開発に成功したと発表した。たんぱく質の折りたたみ現象によく似ていることから、将来はたんぱく質の多様な機能を真似することで医療応用など様々な新素材開発に期待をかけている。
プラスチックなどのポリマーは、分子が共有結合と呼ばれる強い力で鎖状につながってできている。
これに対して弱い力(非共有結合)でつながった分子集合体の超分子は、外部の刺激に敏感に反応し、結合が切れても自己修復できることから、これまでにない新たな機能を持つ材料になると注目が集まっている。一方で、超分子は基軸となる分子鎖の形をコントロールしにくい難点があった。
研究グループはこれまで、大きな分子がつながって風車のような構造ができ、さらに風車がカーブを描きながら弱い力で次々と重なり合う超分子ポリマーになることを見つけていた。
今回はさらにこの風車の重なり合いを長くして、ドーナツ状の一端が開いた「らせん構造」を作った。ところが作りたての超分子の構造は、ねじれて乱れた複雑な格好をしていた。
これを室温で1週間程度寝かせたところ、しだいに乱れ状態が解けてらせん形が現れ、最終的にはきれいならせん形のスプリングが何重にも折りたたまれた構造に変わることを見つけた。
時間をかけてらせん形に折りたたまれていくメカニズムは、あたかも原型を真似て整っていく「鋳型(いがた)効果」として説明できることも分かった。
この構造の変化は、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設のX線小角散乱測定装置で確認した。外部からの刺激を与えなくとも自ら整った構造へと折りたたまれる現象は、たんぱく質の性質に良く似ている。
今後、分子の構造を少しずつ変化させたり、異なる分子を混ぜたりしながら、形態だけでなく認識、触媒、貯蔵、転写、エネルギー変換など、たんぱく質が持つ多様な機能を模倣できるような新素材開発を目指す。
実現すれば分子コンピューターから医療まで幅広い分野への応用も可能になるものと期待している。