西日本向けの多収で味の良い水稲新品種を開発―いもち病などに強く、北陸でも試作始まる:農業・食品産業技術総合研究機構
(2018年9月6日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は9月6日、西日本向けの多収で味の良い水稲の新品種を開発し「恋初(こいそ)めし」と名付けた、と発表した。
近年、主食用米の約4割は外食や、コンビニなどで買って食べる中食(なかしょく)で消費され、そうしたニーズに合わせた業務用の新品種開発が望まれている。
一方、高齢化や担い手不足などで米作りを農業生産法人へ委託する農家が増え、その栽培では田植えから収穫までを効率良く行えるようにするため熟期の異なる品種を組み合わせて栽培することが必須となっており、西日本地域では中生(なかて)と晩生(おくて)の間の“やや晩生”にあたる新品種の開発が求められている。
また、これまでの業務用品種の中には、いもち病や縞葉枯病(しまはがれびょう)と呼ばれるヒメトビウンカによって媒介されるイネのウイルス病に対する抵抗性が不十分なものがあり、西日本では2008年に各地で縞葉枯病が多発している。
こうした状況に対応しようと今回の新品種開発は、農林水産省の委託プロジェクト研究の一環として行なったもので、現在西日本で「中生」品種として栽培されている「あきだわら」と、いもち病や縞葉枯病に強い「中国201号(後の「恋の予感」)」とを交配して育成した。
農研機構は、福山市(広島県)でこの新品種と既存の品種とを比べる育成試験を行っているが、西日本で多く栽培され味の良い品種として知られる「きぬむすめ」より玄米収量が2割程度多く10a(アール、1アールは100㎡)当たり691kgを記録、「きぬむすめ」より出穂期が3日程、成熟期が5日程それぞれ遅い“やや晩生”で、「きぬむすめ」に近い良食味であることを確認している。
また、この「恋初めし」は、水田で生じる最も大きな病害といわれるいもち病と、縞葉枯病に対して強い抵抗性を持っていることが分った
農研機構は、業務用としての利用が期待されるとし、西日本以外でも北陸地域の大規模農業生産法人で既に試作が始まっているという。