卵子作る新メカニズム発見―腸のホルモンが生殖細胞を調節:筑波大学
(2018年9月20日発表)
筑波大学などの研究グループは9月20日、腸から分泌されるホルモンが卵子の元となるメスの生殖幹細胞の増殖を促していることをキイロショウジョウバエを用いた実験で突き止めたと発表した。動物の生殖幹細胞の調節に腸と卵巣という異なる臓器間での信号のやり取りが関与していることを示す初の成果という。動物に共通した生殖幹細胞の制御メカニズムの解明に役立つと期待している。
研究には筑波大の丹羽隆介准教授らのほか、国立遺伝学研究所の近藤周助教、東京海洋大学の吉崎悟朗教授らが加わった。
研究グループが突き止めたホルモンはニューロぺプチドF(NPF)。NPFは従来から、神経細胞で分泌され、摂食行動や睡眠といったさまざまな生理機能を調節することが知られていた。ところが今回、遺伝子工学的な手法でメスの神経細胞によるNPFの分泌を阻害する実験を試みたが、交尾に伴うメスの生殖幹細胞の増殖の様子には変化が見られなかった。
一方で、NPFはオスと交尾したときの刺激でメスの腸からも体内に放出されることが示唆されたという。そのため、この腸からのNPF分泌の働きを遺伝子工学的な手法で阻害したところ、交尾後のメスの生殖幹細胞は分裂の頻度が減り細胞の数も減少した。さらに、人工的に合成したNPFを交尾していないメスの体液に注入したところ、交尾後と同様に生殖幹細胞の増殖が見られた。
この結果から、交尾行動というマクロな環境変化が生殖細胞というミクロなレベルの生命活動へと反映されるメカニズムに、腸と卵巣という異なる臓器間での信号のやり取りが関与していることを明らかになった。
研究グループは今後、動物進化の過程で幅広く受け継がれてきた、複数の臓器が連関して生殖細胞を調節するメカニズムの解明に役立つと期待している。