高性能なフレキシブル熱電薄膜を作製―IoT機器向けの電源素子への応用に期待:筑波大学
(2018年10月24日発表)
筑波大学と産業技術総合研究所の研究グループは10月24日、熱電変換物質のシリコンゲルマニウムをプラスチック基板上に直接合成する技術を開発し、高性能なフレキシブル熱電薄膜を作り出したと発表した。身の周りの熱の有効活用に道を開く成果という。
熱電変換は、温度差によって起電力が生じる現象を利用して熱から電力を得る技術。熱源があれば直接電力が得られるため、IoT社会のセンサ電源などとして注目され、なかでもフレキシブルなプラスチック基板上への形成が期待されている。しかし、プラスチックは耐熱性に劣ることから熱電素子の製膜温度に制約があり、優れた性能の薄膜はこれまで得られていなかった。
研究グループは今回、熱電変換効率がトップクラスのシリコンゲルマニウム(SiGe)を材料とし、これに「層交換法」という手法を適用してプラスチック基板上に熱電薄膜を作り出した。
層交換法は、基板上に金属層と非晶質半導体層を順次積み重ね、熱処理して半導体結晶層を作り出す手法。低い温度で半導体結晶層が得られ、プロセスも簡単なのが特長。
今回、金属層にアルミニウム(Al)、非晶質半導体層にSiGeを用い、SiGe結晶層を、通常の結晶化温度よりも200℃以上低い温度で直接基板上に合成することに成功した。
得られたSiGe膜は、膜中に含まれるAl原子により高い電気伝導度を持ち、熱電変換の性能指標となるパワーファクターは低温合成膜として最高レベルの値だった。また、試料を湾曲させてもパワーファクターの低下は見られず、高いフレキシビリティが認められた。
今回合成した膜はp型半導体なので今後n型半導体を作製したり、厚膜化して出力を高めるなどし、熱電変換デバイスの開発に結び付けたいとしている。