台風21号の記録的な暴風・高潮の要因を分析―進行方向右側に南風の最大風速域が局在:気象研究所
(2018年11月9日発表)
気象庁気象研究所は11月9日、去る9月4日に近畿・四国地方を中心に記録的な暴風や高潮をもたらした平成30年台風第21号について、暴風と高潮の要因を調査した結果を公表した。
台風21号は8月末に南鳥島近海で発生、翌月4日に25年ぶりに「非常に強い勢力」で徳島県南部に上陸し、兵庫県神戸市付近に再上陸したあと、西日本を縦断して同日夕に日本海に抜け北上した。
関西空港の滑走路や駐機場が広い範囲で冠水したのをはじめ、大阪府や和歌山県などの各地で史上最大あるいは最大クラスの瞬間風速を記録、建物の屋根が飛散したりトラックが横転するなど、近畿地方を中心に大きな被害を出した。
気象研は、この台風により紀伊水道および大阪湾の沿岸地域で記録的な暴風が吹いた要因について、台風を押し動かす全体的な風速が15m/s(メートル毎秒)と比較的大きかったこと、四国地方に接近以降、台風の「眼の壁雲」が形成され、暴風が維持されたこと、その結果、台風の進行方向の右側に南風の最大風速域が局在したことが要因と考えられるとしている。
「眼の壁雲」は、比較的風の弱い中心部を取り囲む、発達した積乱雲群の領域のことで、最も強い風が吹く。
大阪湾での記録的な高潮については、台風が大阪湾で強い南風が吹く進路を通ったことにより、海水が湾北部の大阪市や神戸市の海岸に吹き寄せられ、大量の海水が集積したため、大きな高潮となったとしている。
風が弱まってから、湾南部の淡路島の洲本や淡輪で改めて潮位が高くなったのは、副振動によって海水が南へ戻ったためとしている。