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農業用パイプライン制御する効率的なシステムを開発―水田への配水自動で行い省力化と大幅な節水・節電を実現:農業・食品産業技術総合研究機構

(2018年11月12日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は1112日、農業用水を送るパイプラインをパソコンやタブレット端末、スマートフォンなどでコントロールする効率的な配水管理制御システムを開発したと発表した。水田への水の供給を自動で制御でき、水管理の省力化と大幅な節水・節電が可能なことから国や都道府県が実施している圃場整備(ほじょうせいび:農地整備)などへの導入が期待される。

 国土交通省の発表によると、日本は年平均1,718mmの降水量がある。その豊かな水を水源から農地へ送るのにパイプラインが使われ、水田地帯ではポンプなどを介してその水を各農家の水田に供給するパイプライン灌漑(かんがい)が広く行われている。

 開発したシステムは、「iDAS(アイダス)」と呼び、ICT(情報通信技術)を活用してポンプ場から各農家の給水栓までを連携させ、モニタリングしながらパソコンやタブレット端末の簡単な操作で効率的な配水管理が行えるようにした。

 パイプライン灌漑に必要なポンプ場などの水利施設は、現在主に手動で管理されているが、新システムはその施設管理の省力化と共に、圃場の水の利用具合に応じた効率的な配水が自動で行える。

 農研機構は、実証試験として2017年に取手市(茨城県)の水田3.5ha(ヘクタール、1ha1万㎡)と、龍ヶ崎市(同)の水田7.5ha2ヶ所にこのシステムを導入してポンプ場から水田の給水栓まで直接農業用水を送る直送式の給水を実施したところ、ポンプ場の消費電力を今より40%削減できたとしている。

 日本各地の地中に敷設されている農業用パイプラインの総延長は、7,500kmに達するといわれる。農研機構は「中山間地域(山間地)の水田パイプライン灌漑地区へも実証試験地を拡大し、全国的な普及に向けて取り組んでいく」と発表している。