新しい入れ歯用の粘膜治療材を開発―口の中の雑菌や虫歯菌の増殖を2週間にわたり抑制:広島大学/北海道大学/産業技術総合研究所ほか
(2018年11月14日発表)
広島大学、北海道大学、(国)産業技術総合研究機構などの研究グループは11月14日、入れ歯用の粘膜治療材に抗菌剤を組み合わせた装置を開発し、厚生労働大臣から製造販売の承認を得たと発表した。高齢者の誤嚥性肺炎につながりやすい口の中の微生物が付着しにくく、汚染防止ができる。薬物と機器の組み合わせ製品を企業と開発に成功したもので、保険が適用されれば来年春にも販売する。
寝たきりや認知症などで日常生活に介護を必要とする高齢者は600万人を超えている。こうした人たちへの在宅医療では入れ歯の治療がもっとも多く、入れ歯で傷ついた粘膜の治療に粘膜調整材がよく使われている。ところがこれには口の中の細菌や真菌などの微生物が付着しやすく、抵抗力のない高齢者の誤嚥性肺炎の感染源になり、死に至るリスクも大きい。
この対策として微生物が付着しにくく、微生物汚染を防止するタイプの粘膜調整材の開発が求められていた。粘膜調整材は歯科医師が入れ歯の治療で使うもので、粉と液を混ぜ合わせた軟らかく弾性のある高分子材料を入れ歯の裏打ちに使う。人体へのリスクが比較的少ないとされる。
口の中の微生物のカンジダ菌、黄色ブドウ球菌と虫歯菌のミュータンス菌の3菌について、生理食塩水に浸けて2週間抗菌テストをしたところ、カンジダ菌は抗菌剤を使わないものと比べ約100分の1以下に、黄色ブドウ球菌とミュータンス菌は2週間経ってもゼロだった。
製造は(株)ニッシンが、製造販売はメディカルクラフトン(株)が担当する。