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サンゴと共生藻との関係を分子レベルで把握―サンゴ白化からの回復に重要な情報を取得:筑波大学

(2018年11月16日発表)

 筑波大学と(国)国立遺伝学研究所、カロリンスカ研究所(スウェーデン)などの研究者グループは1116日、サンゴの白化現象に関わっている褐虫藻とサンゴとの共生関係を調べ、共生成立過程での遺伝子発現レベルの変化を読み取ることに成功したと発表した。サンゴ白化への対応方法を探る上で重要な情報が得られたとしている。

 褐虫藻は、造礁サンゴの細胞内に共生する渦鞭毛藻(うずべんもうそう)で、サンゴの白化では共生関係が崩れ、褐虫藻の数が減少することが明らかになっている。研究グループはこの共生関係を深く理解するため、今回、褐虫藻がサンゴ内で増加する過程の分子レベルでの解明に取り組んだ。

 実験ではまず褐虫藻を持たないサンゴを飼育し、褐虫藻を共生させる操作をすることで、褐虫藻が共生したサンゴと共生していないサンゴを作成、これらの比較を通して共生に関わっている遺伝子発現などを調べた。

 その結果、サンゴ‐褐虫藻の細胞内共生の成立の際に、サンゴの免疫系の一部と消化酵素の一部の発現が低下し、サンゴの免疫システムや消化酵素の機能低下が起こることが明らかになった。また、それと同時に、褐虫藻が共生することでサンゴの糖代謝、脂質代謝、アミノ酸代謝が活発化することが分かった。

 これは、サンゴにとって褐虫藻の存在が糖、脂質、アミノ酸を得るために必須であることを示しているもので、サンゴと褐虫藻との共生関係はサンゴにとって命綱とも言える関係という。

 今回の研究で、褐虫藻がサンゴの細胞内に共生する際に起きる変化を分子レベルで読み取ることができたことは、サンゴの白化からの回復を図る上で重要な手掛かりになるとしている。