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水生植物の長い生活史から効果的な保全法をつかむ―水底で休眠する種子からの再生、植物種の回復の頻度を明らかに:国立環境研究所ほか

(2018年11月13日発表)

 (国)国立環境研究所と東京農工大学、東邦大学、常葉大学の研究グループは1113日、水性植物を効果的に保全するには、生物の休眠状態や繁殖開始、産卵数など長期にわたる生活史の特性をつかむことが、重要であると分かったと発表した。近年、河川や湖沼の環境悪化が進み多くの水生植物が絶滅の危機に瀕していることから、貴重な生育場所としてのため池の役割に注目した。少数のため池を選定し、優先的に保全する必要を説いている。

 研究グループは広島県東広島市に広がる415か所のため池で、生息する水生植物62種について1974年以降の37年間にわたる生存と死滅のデータを記録した。

 絶滅のリスクを、前年から翌年にかけて地上部で生存が確認された植物が姿を見せなくなった確率(消失確率)とした。不在状態から生存が確認された確率(回復確率)を計算し、この確率をもとに地上部の植物種がそれぞれ将来にわたってどう変化したか、地上・地下を合わせた植物群の絶滅確率をシミュレーションにより計算した。

 水性植物の種子の寿命は長くとも40年程度で、地上部に姿を見せない不在状態が長いほど回復確率が下がり、絶滅に近づくものと設定した。

 この結果、62種のうち回復確率が0.2を超えたのは25種(約40%)、0.4を超えたのはヤマトミクリ、マツモ、ツクシクロイヌノヒゲの3種(4.8%)だった。前年に地上で姿を見せなくとも翌年以降に水底の埋土から再生する種が比較的多いことも分かった。

 さらに全ての水生植物種の保全のためには幾つのため池が必要かを調べた。

 すると、水底の埋土種子が再生しないと考えた場合は、植物種ごとの絶滅確率は40年目付近を境に急激に増え、100年後は全ての種がこの地域で絶滅するという予想が得られた。

 また、埋土種子からの再生を考慮すると、絶滅確率は緩やかに増え、100年後に絶滅確率が70%を超えたのはウキシバ、コガマ、ナガエミクリなど7種にとどまった。いずれも根が水底の土壌中にあり葉や茎が水面から出ている抽水植物か、体全体が水中にあって固着して生活する沈水植物だった。

 このことから、ため池の岸辺や水中で生息する植物種の絶滅の心配は高いものの、再生プロセスが保証されるなら絶滅リスクを減らせるとしている。

 保護するため池の選定では、植物種ごとに埋土種子からの再生を考慮して保護すれば、少ない数のため池でより多くの種を効果的に保全できるとしている。