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「ヤンバルクイナ」の「無限分裂細胞」作ることに成功―試験管内で半永久的な増殖が可能に:国立環境研究所ほか

(2018年11月16日発表)

 (国)国立環境研究所、岩手大学などの研究グループは1116日、共同で絶滅が心配されている鳥「ヤンバルクイナ」の細胞を「無限分裂細胞」にすることに成功した、と発表した。この細胞は、試験管内で半永久的に増殖させることが可能で、生体実験が難しいヤンバルクイナの研究が細胞レベルでできるようになるものと期待される。

 細胞は、試験管の中で培養すると一定の回数細胞分裂を起こすと、細胞老化が発生して細胞増殖がストップしてしまう。その細胞老化現象をなんらかの方法で起らないようにして試験管の中で半永久的に増殖できる細胞にしたのが無限分裂細胞。不死化細胞とも呼ばれ、マウスやヒトを中心に研究が行なわれていて様々な方法が報告されている。

 しかし、鳥類の細胞の無限分裂化は、哺乳類より細胞培養が難しいこともあって研究はまだ進んでおらず、ニワトリで自然発生によって生まれた例が報告されているだけといわれ、これまでの哺乳類で開発された方法では鳥類の細胞の無限分裂化はできないと見られていた。

 国立環境研は、国内の絶滅危惧野性動物種の細胞保存と研究資源化に取り組んでいるが、絶滅危惧種は細胞のサンプリングの機会が限られてしまうため細胞老化現象を防いで長期間安定して使用できる細胞を実現することは絶滅危惧種を研究する上での大きな課題で、今回中でもその必要性の高い絶滅危惧鳥ヤンバルクイナに挑戦した。

 ヤンバルクイナは、世界でも沖縄県北部の国頭村(くにがみそん)などの「やんばる」と呼ばれている地域の森にしか生息していない日本固有の鳥で、国の天然記念物になっている。

 国立環境研は、絶滅が危惧されている鳥類の無限分裂細胞を得たのは世界でも初めてといっており、研究には他に(国)国立がん研究センター研究所、東北大学、酪農学園大学が参加した。

 開発したのは、交通事故などで死んだヤンバルクイナから採取した体細胞にヒト由来の「変異型サイクリン依存性キナーゼ4CDK4)」、「サイクリンD」、「テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)」と呼ばれる3つの遺伝子を導入するという方法。この処理を行なうと「劇的に細胞老化に至るまでの分裂能力が亢進(こうしん)する」(国立環境研)ことを見つけ、3遺伝子導入細胞の一部から半永久的に細胞増殖を起こすヤンバルクイナの無限分裂細胞を得ることに成功した。