温暖化の適応策として労働時間シフトの効果を検証―今世紀末に6時間程度の前倒し必要、シフトだけでは不十分:国立環境研究所ほか
(2018年11月21日発表)
地球温暖化が進んだ場合、労働中の熱中症を避けながら、休憩を取ることによる経済的損失も回避するには、朝の労働開始時間を世界平均で6時間程度早めることが必要との予測を、(国)国立環境研究所、京都大学、筑波大学の研究チームが11月21日に発表した。チームは「労働時間のシフトだけの対応では暑熱ストレスの影響を避けるのは困難だ」と指摘する。
熱中症などのリスクを低減するため、各国の機関などは、暑さ指数(WBGT)や作業の強度ごとに必要な休憩時間を定めている。指数が高くなるほど、作業時間を短くすることが推奨されている。
チームは世界全体を緯度、経度0.5度ずつの格子に分け、コンピューターシミュレーションで、それぞれの1時間ごとの暑さ指数を算出。温暖化の影響を軽減する対策「適応策」として勤務時間を早朝にシフトすることを想定し、どれくらい前倒しすれば、今と同程度の作業時間を確保できるか分析した。
基本の労働時間を午前9時~午後5時(8時間)と仮定。排出削減が進まず、温室効果ガス削減がまったく行われず、世界の平均気温が産業革命前より4.5℃上昇した場合は作業時間確保には、未明や早朝に5.7時間ずらすことが必要との結果になった。パリ協定が掲げる「産業革命前からの気温上昇を2℃未満」という目標を達成した場合でも、多い国では2~3時間程度のシフトが必要だという。
さらに、チームは日の出以降に働くことを想定し、前倒しを3時間未満として分析。労働時間をシフトしないと年間で世界の国内総生産(GDP)の2.4%の損失が生じ、シフトをしても1.6%の損失があると予測された。チームは「生活リズムを変更することで健康上の問題が生じることが知られており、シフトが3時間以内でも悪影響がないというわけではない。地域や産業ごとの事情を考慮し、様々な適応策も組み合わせることが必要だ」としている。