水を含んだ岩石が地震発生の原因となる可能性を発見―スラブマントル地震の発生機構解明に一歩:建築研究所
(2018年11月26日発表)
(国)建築研究所は11月26日、陸の下に沈み込んだ海洋性プレート内の水を含んだマントル岩石が、スラブマントル地震発生の原因となる可能性を発見した、と発表した。
陸の下に沈み込んだ海洋性プレートは、スラブと呼ばれ、表層近くのスラブ地殻とそれより下のスラブマントルからできている。
そのスラブマントル部で発生する地震がスラブマントル地震で、規模的にはプレート境界型地震や内陸地震より小さいとされている。しかし、CT(コンピューター断層撮影)と同様の原理で地下構造を診断する地震波トモグラフィーが行ない難いことから研究が遅れている。
そのため、スラブマントル地震にはまだ不明な点が多く、その一つが水で、地震の発生に水が必要なのか否かについての議論がこれまで続いてきた。
研究は、東北地方と北海道地方の下に沈み込む海洋性プレート内で発生した地震と、フランスの研究グループが行った室内実験地震で得られた結果とを結びつけて定量的に比較検討するという方法を使って行った。
フランスの室内実験地震は、スラブマントルの主要構成成分である橄欖石(かんらんせき)と蛇紋石(じゃもんせき)とを混ぜ1.5Gpa(ギガパスカル、1万5千気圧)の超高圧をかけながら500℃の高温に約10時間置いてマントル岩石を人工的に作って行うというもの。
その結果、東北地方と北海道地方の下に沈み込む海洋性プレートのスラブマントル領域には水が存在し、岩石に含まれる含水鉱物が地震発生に関係し、水がスラブマントル地震の発生機構に関与している可能性があることが分かった。
スラブマントル地震の発生には、水が関わっているとする説と、水がなくても発生しうるとする説が提案され、検証が待ち望まれているが、今回の結果により「スラブマントル地震の発生過程の基本部分が明らかになった」と研究にあたった建築研の国際地震工学センターは言っている。