ナノ粒子でプラスチックの発泡を微細・均質化―光を透す断熱性発泡ポリマーの開発の可能性浮上:産業技術総合研究所ほか
(2018年11月26日発表)
(国)産業技術総合研究所と先端素材高速開発技術研究組合は11月26日、断熱材や緩衝材などに広く用いられている発泡ポリマーの発泡を、微細で均質にする手法を見出したと発表した。光透過性と高い断熱性を兼ね備えた発泡ポリマーの開発が期待されるという。
発泡ポリマーは、一般に二酸化炭素などの発泡ガスをポリマーに高圧で溶解させて急減圧し、減圧によって溶解できなくなったガスがポリマー中で気泡を形成することを利用して作っている。
市販の発泡ポリマーの気泡径は通常数十~数百㎛(マイクロメートル、1㎛は100万分の1m)だが、最近は「ナノセルラー」と呼ばれる気泡径1㎛以下の発泡ポリマーが注目されている。高い空隙率と均一な気泡径のナノセルラーは断熱性能に優れ、光透過性を持つことが理論的に予測されている。
そこで、研究グループは窓用の断熱材への応用をめざし、ナノセルラー実現のための研究開発に取り組んだ。
発泡ポリマーの製造のかなめの一つは核剤。核剤は、ガスが気泡を形成する際の発泡の起点となり、気泡数を多くしたり、微細にしたりする効果を持つ添加物のこと。研究グループは、ナノセルラーの実現には、核剤を気泡のサイズより小さいナノ粒子とする必要があると考え、ナノ粒子を分散させたポリマーのモデルを構築し、発泡プロセスをシミュレーションした。
その結果、ポリマーと核剤の親和性が高く、ポリマーの発泡速度が大きいと、添加したナノ粒子の表面ではなく、ポリマー内部から発泡が発生し、均質で微細な発泡構造の形成が認められた。これは、ナノ粒子が従来の核剤のように発泡の起点としては機能せず、逆にポリマーから発生した気泡の成長と合一を効果的に抑制する”アンチ核剤“として作用していると考えられるという。
この“アンチ核剤”は気泡径分布や気泡分散性の制御に有効であり、100nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下の微細な気泡を均一に分散させる必要がある光透過性の高性能断熱材の実現に向けた手法として期待されるとしている。