培養細胞を高速・自動処理できる技術を開発―ヒト由来細胞の大量活用に道開く:産業技術総合研究所ほか
(2018年12月6日発表)
(国)産業技術総合研究所は12月6日、光応答性ポリマーとレーザーを用いて培養細胞を高速に自動処理する技術を開発したと発表した。不要細胞を判別・除去したり、培養細胞を細分化したりする作業を自動化したもので、今後見込まれるヒト由来細胞の大量活用に道を開く成果という。
iPS細胞の樹立などをきっかけに、培養ヒト細胞の活用の動きが活発化している。現在、不要細胞の判別・除去や細胞単層の細分化を伴う継代操作は、基本的に人の手作業で行われているが、今後需要の増加や品質管理の厳格化などが予想されるため、操作の自動化のニーズが高まっていた。
産総研は先に(株)片岡製作所と共同で、光応答性ポリマーを用いて培養細胞を高速レーザー処理する要素技術を確立した。今回、この技術に基づき、理化学研究所、名城大学、筑波大学、(株)iPSポータルと連携し、ヒトiPS細胞の継代培養に必要な基本操作の自動化に取り組んだ。
開発した主要な技術は、不要細胞の分別除去技術。光応答性ポリマーの薄層を培養基材表面に導入し、可視光レーザーを高速で精密に走査させるとともに、顕微鏡観察像を高速に取得する装置を開発。不要細胞の処理速度と処理精度を飛躍的に向上させた。
もう一つは、ヒトiPS細胞の継代培養で突発的に生じる分化細胞の判別技術の開発。高速に取得された顕微鏡観察像から未分化iPS細胞と分化細胞を判別するプログラムを、人工知能技術の一つであるディープラーニングに基づいて開発した。これによって判別された不要な分化細胞はレーザー照射によって自動的に除去される。
三つ目は、ヒトiPS細胞の細分化技術。ヒトiPS細胞の場合、細胞死を避けるため、ある程度の個数が集まった状態で扱う必要があるが、通常手作業で行われている操作では、大きさにバラツキが生じて継代後の培養系が不均質になるという問題があった。
今回、ヒトiPS細胞単層をレーザーで切断して均一なサイズの細胞集塊を効率的に作成する技術を確立した。その結果、10継代にわたって未分化状態を安定に維持できることが確認された。
これらの開発技術により、今後、品質管理下でヒトiPS細胞からの特定細胞の大量生産が可能になり、ヒト由来細胞の活用の推進が見込まれるという。開発技術は自動細胞プロセシング装置として片岡製作所から2018年度内に製品化される予定という。