電気化学反応における量子‐古典転移現象を発見―燃料電池の高効率化の研究進展へ:物質・材料研究機構ほか
(2018年12月11日発表)
(国)物質・材料研究機構と北海道大学の共同研究グループは12月11日、電気化学反応において、反応過程が量子力学現象から古典力学現象に移り替わる、量子‐古典転移という新しい物理過程を発見したと発表した。量子現象を利用して、電気化学的エネルギー変換を高効率化するなど基礎研究の新展開が期待されるという。
研究グループは先に、電気化学反応におけるプロトン(水素の原子核)移動が特定の条件下では量子トンネル効果(QTE)に支配されていることを見出した。今回、水素を燃料として電気を生成する代表的な電気化学反応の一つである燃料電池の反応を対象に、その要である酸素還元反応(ORR)の機構を調べた。
その結果、反応の活性化のカギを握る過電圧が小さな領域では、特定の条件においてプロトンが量子トンネル効果によって活性化障壁を透過することで反応を進行させ、電流を生成していることを確認した。
また、過電圧を大きくすると、半古典的理論に従ってプロトンが活性化障壁を超えて移動する反応経路に転移することが分かった。
つまり、過電圧が低い条件では、酸素還元反応のプロトン移動機構は量子トンネル効果が支配しており、過電圧が大きくなると、反応機構は古典的な遷移状態理論に従ったプロトン移動が支配的になることが分かった。
これは、電気化学的プロトン移動における量子‐古典転移という新たな物理現象の発見であり、電気化学的反応におけるプロトン移動への量子効果の大きな関与が初めて示されたことになるという。
今後、電子とプロトンが協奏的に移動する系である電気化学的エネルギー変換過程における量子効果の理論の発展が期待されるとしている。