再生可能エネルギーの主力電源化へ―水素製造・貯蔵に技術開発指針:物質・材料研究機構ほか
(2018年12月13日発表)
(国)物質・材料研究機構は12月13日、東京大学、広島大学と共同で再生可能エネルギーによる安価な水素製造に必要な技術レベルを試算したと発表した。太陽光発電と蓄電池を組み合わせた水素製造システムで国際的な価格競争力のある安価な水素の製造・貯蔵に欠かせない技術レベルを明らかにした。再生可能エネルギーを主力電源化していくための技術開発も指針になるという。
電力系では発電量と消費量が常に均衡していないと停電などの問題が起こりやすい。一方、太陽光発電は日照量によって時々刻々発電量が変動するなど、再生可能エネルギーは発電量が自然まかせで不安定なことが主力電源化の大きな壁になっている。
そこで研究チームは、太陽光発電の発電量に応じて充放電できる蓄電池と水の電気分解で水素を製造・貯蔵する技術を用いた統合システムを想定、その実現に必要な安価な水素製造の条件などを探った。また、統合システムに必要な各技術のコストや蓄電池の充放電速度などの技術レベルの明確化を試みた。
試算では、太陽光、蓄電池、水素に関連するそれぞれの技術分野の将来の進展を考えながら理想的なシステムのあり方を追究。具体的には、夜間や日照条件によって年間稼働率が約12%の太陽光発電と水電解装置に加え、十分な容量の蓄電池を組み合わせるシステムについて検討した。
その結果、太陽光発電からの電気を昼間に貯めて夜間に放出することで一日の電力を平準化できることや、蓄電池を適切に利用すれば昼夜を問わず一定の出力が得られ必要な水電解装置の容量は太陽光発電の容量よりもずっと小さくできることなどが分かった。例えば放電速度は遅いが安価な蓄電池を開発することで、2030年ごろには国際的に見ても価格競争力の高い水素製造が実現できるという。
研究チームは「無数に存在する各技術の組み合わせ方に関する解析が可能となり、最適なシステム化の姿を示すことができた」と話している。