高次脳機能障害者の記憶力を向上させる方法見つける―フラワーアレンジメントを利用して実現:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2018年12月18日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構と茨城県立医療大学は12月18日、共同で認知機能に障害を負った高次脳機能障害者の記憶力を向上させる方法を見つけたと発表した。花を生けるフラワーアレンジメントを利用して記憶力の向上を図るというもので、向上効果が3カ月間維持されることを確認した。
フラワーアレンジメントは、花や葉を自由に組み合わせて生けることをいい、フラワーデザインとも呼ばれて人気がある。
農研機構と茨城医療大の研究グループは、フラワーアレンジメントでは花の向き、組み合わせなどを決めるのに意識無意識に様々な認知機能が働いていることに着目。2010年に「SFAプログラム」と呼ぶフラワーアレンジメントで行う作業を通して認知機能の訓練を行うリハビリテーション手法を発表している。
今回の記憶力向上法は、その「SFAプログラム」を使った。
SFAプログラムは、水を含ませたスポンジを花瓶の代わりに使ってその所定の位置に被験者が手順書に沿い指定の花をパズルを組み立てるように挿してフラワーアレンジメントを作成し、その作業を何回か繰り返えさせて認知機能の訓練を行うというもの。自由な発想で花を生けるのではなく決められた手順で繰り返して作らせるリハビリテーション手法で、視覚情報を一時的に記憶する能力が向上するなどがこれまでに分かっていた。
今回、さらにそのSFAプログラムの研究を進めようと事故や脳卒中などで認知機能に障害を負った高次脳機能障害者の記憶力向上に取り組んだ。
実験は、平均年齢が43.8歳の受傷(または発症)から1年以上経った高次脳機能障害者16人を対象にして約4週間の間にSFAプログラムを6回繰り返す臨床研究を行い効果を調べた。
その結果、16人の記憶テストの平均得点が1回目の12.7点から4回のテストで23.3点にまで上がることが分った。さらに16人の内の9人について追跡調査を行い3カ月後の状況を調べた。すると、9人全員にその向上した成績が維持されていることが判明した。
こうした結果が得られたことから農研機構は「高次脳機能障害者の認知リハビリテーションへの活用が期待できる」といっている。