粘土鉱物の摩擦の起源明らかに―断層運動の仕組み解明や固体潤滑剤の設計に貢献:物質・材料研究機構ほか
(2018年12月19日発表)
(国)物質・材料研究機構と東京大学、広島大学の共同研究グループは12月19日、粘土の主要構成物で、層状構造から成る「粘土鉱物」の摩擦の起源を解明したと発表した。接触面の原子間に働く静電的な力が摩擦の起源であることが分かったという。断層運動の仕組みの解明や固体潤滑剤の設計への貢献が期待されるとしている。
粘土鉱物を含む層状結晶は摩擦力の小さいものが多く、地滑りや断層運動の一要因と考えられている。また、摩擦を低減する固体潤滑剤としての利用も検討されている。しかし、粘土鉱物の摩擦のメカニズムはこれまで未解明であったため、どのような条件で滑りやすいのかなどを推定することは困難だった。
粘土鉱物の層の厚さは0.7~1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)で、これが積層した構造になっている。摩擦はこれらの接触点における接着あるいは凝着が原因と考えられてきたが、摩擦と接着エネルギーの間に相関は認められなかったことから、研究グループは摩擦を基礎から捉えなおすことが重要と考え、原子レベルで平滑な表面を持つ「白雲母」を対象に、摩擦のメカニズム解明に取り組んだ。
実験では、白雲母表面間に乾燥状態で高圧をかけて水分を排除し、表面をずらしながら摩擦力を測定した。その結果、接触面が削れてできた摩擦粒子の影響で、結晶方位の影響が平均化されている可能性があることが分かった。さらに、接触面で原子間に働く静電的な力を計算し、結晶方位の影響を平均化して摩擦力を求めたところ、実験結果と非常によく一致することが分かった。
これらの結果から、粘土鉱物におけるセンチメートルサイズの摩擦が原子スケールの静電的な力によって支配されていることが明らかになったという。
今後は粘土鉱物全般の摩擦強度を理解する理論を構築し、地滑りや地震と摩擦の関係解明を目指したいとしている。