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配線を挟むだけで直流を精密測定出来るクランプ型電流計の開発に成功:産業技術総合研究所/寺田電機製作所

(2016年7月28日発表)

(国)産業技術総合研究所は7月28日、挟み込み(クランプ)型センサーで直流の電流を精密測定出来るポータブルの電流計を開発した、と発表した。(株)寺田電機製作所との共同開発の成果。この開発の産総研側研究者は物理計測標準研究部門応用電気標準研究グループの堂前篤志主任研究員と量子電気標準研究グループの金子晋久研究グループ長。新電流計は60A(アンペア)まで測れる3チャンネル型で、大きさはアタッシュケースほどの大きさ(縦406mm、横499mm、高さ192mm)。重さは約8.2kg。測定精度は従来型より約10倍向上し、内部バッテリー使用で最大4時間の駆動が可能という。

 クランプ型の電流センサーは電気配線への取り付け、取り外しが容易なので広く使われているが、使用環境の影響を受けやすいので測定精度に限界があった。そこで今回、研究グループは新構造の直流用クランプセンサーと直流電流計を開発。測定値の誤差を自動検知・補正する機能を加えて測定精度を大幅に向上させると共に小型化・省電力化を進め、持ち運び出来る電流計を実現した。

 非接触で直流を測定するには、電流が流れると周囲に生ずる磁界に応じた電気信号を出すホール素子を利用する。しかし、この原理を利用した従来型のクランプ型直流センサーは素子の着脱時の変動やセンサー部分の磁化による誤差で高精度測定が難しかった。そこで今回は、クランプ型センサー部分に着磁を検知して消磁を自動で行う機能や、ホール素子出力のオフセットやその変動を検知して補正する機能を開発、付け加えた。