植物と微生物共生の仕組み解明へ―カギとなるたんぱく質発見:筑波大学ほか
(2018年12月27日発表)
筑波大学と基礎生物学研究所は12月27日、微生物と共生して窒素などの栄養成分を大気から得ている植物が微生物を根の中に取り込む仕組みの一端を解明したと発表した。植物が微生物を受け入れるのに必要なたんぱく質「LAN」を発見し、その遺伝子を突き止めた。やせた土地での作物栽培や化学肥料に頼らないクリーンな農業の実現に道が開けると期待している。
筑波大の寿崎拓哉准教授らの研究グループが、基礎生物学研究所の川口正代司教授、関西学院大学の武田直也准教授と共同で明らかにした。
マメ科植物が根粒菌を根に共生させることで空気中の窒素を栄養分として取り込んでいることはよく知られているが、それ以外にも多くの陸上植物が菌根菌を根に共生させてリン栄養や水を得ている。これらには共通した仕組みが存在することが知られているが、分子レベルでの仕組みには未解明な点が多かった。
研究グループは今回、マメ科の植物「ミヤコグサ」の中から突然変異を起こした個体を探し出した。さらに根粒菌も菌根菌も根の中に受け入れることができないこの変異体を詳しく調べ、変異の原因になっているLAN遺伝子の存在を突き止めた。さらにこの遺伝子が作るLANたんぱく質が、植物体内でさまざまな遺伝子の働きを調節する30種類ほどのたんぱく質の複合体であることを突き止めた。
菌根菌は植物の祖先が海から陸上に進出した約4億5千万年前には植物の祖先と共生関係にあったとされているが、根粒菌はそれよりずっと後の約6千万年前に始まったとされている。そのため根粒菌は菌根菌と植物の共生の仕組みを一部流用するという共通の仕組みを利用することで植物と共生できるようになったと考えられていたが、その詳しい仕組みはこれまでよく分からなかった。
研究グループは、今回のLANの発見によって根粒菌と菌根菌が植物と共生するための新たな共通制御システムが見出されたとみている。今後はLANが遺伝子の働きをどのように制御しているかなど、さらに詳しいメカニズムを明らかにし、植物と微生物が共生するための制御機構の全容解明を進めたいとしている。