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コーヒーのカスで安全な土壌消毒剤を開発―トマトのポット栽培で、青枯病の抑制を確認:農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年1月10日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は110日、コーヒー豆のカスと酸化鉄で作った殺菌用資材に土壌改良剤の粉末過酸化カルシウムを混ぜると、土壌伝染病の青枯病に対して強い予防効果のあることを、実験室レベルで確認したと発表した。これまで青枯病に使われていた薬剤は劇物指定だったが、新たな消毒法は安全で農家の負担も少ない。

 施設トマトの産地では伝染性の青枯病菌の広がりが大きな問題になっている。地温が25℃~30℃になると土壌を介して広がる。青枯病は植物が青々としながらしおれるためこの名がついた。これまで有効な薬剤とされたのはクロルピクリンのような劇物指定剤に限られていた。

 農研機構は2010年に茶殻やコーヒのカス(ポリフェノール類)に、酸化鉄や硫酸鉄を混ぜるとフェントン反応により酸化力の強いヒドロキシルラジカル(・OH)が発生し、強力な酸化力によって青枯菌を殺菌することを見つけ、公表していた。

 今回はフェントン反応を起こすために土壌改良剤に使われている粉末の過酸化カルシウム(CaO2)を使い、土壌中の水分と反応して酸化力の強いH2O2を発生させた。

 ポット栽培のトマトで、土壌1Kgにポリフェノール鉄錯体(2g)とCaO22g)を処理したところ青枯病菌が減少し、60日間発病しなかった。

 殺菌効果は、フェントン反応触媒で発生する水酸基(・OH)によることを電子スピン共鳴によって検出し、確認した。またコーヒーカスの中のコーヒー酸やクロロゲン酸が水酸基(・OH)の発生に寄与していることも明らかにした。青枯病だけでなく他の土壌病害にも効果があると期待されている。新年度から畑での栽培に対して実証実験を始める。