妊婦の血液中金属濃度とIgE抗体の関係まとまる―生まれてくる子どもの健康に与える影響の第一弾結果:産業医科大学/国立環境研究所ほか
(2019年1月18日発表)
環境省と(国)国立環境研究所エコチル調査コアセンター、産業医科大学医学部は1月18日、約2万人の母親の血液中の金属類の濃度を測定し、スギ花粉やハウスダスト、動物の皮膚や毛髪のゴミによるアレルギーの発症につながるとされる特異的IgE(免疫グロブリンE)抗体の濃度との相関関係を調べる調査を実施し、第一弾の結果を公表した。「因果関係は明らかではない」としつつも、小児期に食品や環境中の金属、スギ、ハウスダストなどをあびることがアレルギー発症の引き金につながる可能性が考えられるとしている。
「エコチル調査」は環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査」で、エコ(環境)とチル(チルドレン=子ども)の合成語。2011年から国内の10万組の子どもと両親を対象に疫学調査を開始した。胎児段階から13歳になるまで継続的に健康と発達状態を調べ、成長に与える影響を調べようという大掛かりな取り組み。国立環境研究所が中心になり、全国の大学や公的機関による15か所のユニットセンターと取り組み、2032年まで続ける。
今回は福岡ユニットセンター(産業医科大学)が中心に約2万人の母親の調査結果をまとめた。
血中の金属類濃度を4つのグループ(低い、やや低い、やや高い、高い)に分け、IgE抗体が低濃度と高濃度の場合との関連を解析した。
その結果、「水銀濃度とIgE抗体の関係」では、血中水銀濃度のやや高いグループがスギのIgE抗体高濃度の人が多かった。
「水銀濃度とハウスダストや動物上皮(動物の毛髪や皮膚のゴミ)」では、血中水銀濃度の高いグループがIgE抗体高濃度の人が少なかった。
「セレン、マンガン濃度」では、血中セレン濃度の「やや高い」グループと「高い」はスギのIgE抗体が高濃度の人が多かった。血中マンガン濃度は低いグループと比べて、やや高いグループでは動物上皮のIgE高濃度の人がなかった。
この結果を説明できるメカニズムはまだ分かっていない。因果関係を明らかにするには、スギ花粉の飛散量によってIgE抗体値が影響を受ける可能性があるため、血液採取の時期やスギ花粉の飛散量の変化などを十分考慮した研究が必要になる。また小児期に金属やハウスダストなどを浴びた人は、成人期のIgE抗体に影響を及ぼしている可能性があるため、小児期から成人期を通した縦断的な研究が必要になる。
今後は10万人のデータを解析して、今回と同様に妊婦の血中金属濃度とIgE抗体値の間に統計学的に有意な関係があるかどうか調べていくことにしている。