サンゴが持つ緑色蛍光たんぱく質の働きを解明―世界的な課題である白化の回復に役立つかも:基礎生物学研究所/東北大学/産業技術総合研究所ほか
(2019年1月21日発表)
青色光を受けて緑色の蛍光を発するサンゴ
(基礎生物学研究所提供)
基礎生物学研究所、東北大学、(国)産業技術総合研究所とオーストラリアのジェームズクック大学の研究グループは1月21日、共同でサンゴが体内に持っている緑色の光を発する「緑色蛍光たんぱく質(GFP)」の働きを解明することに成功したと発表した。海水温の上昇などによりサンゴの白化が世界的に問題となっているが、白化したサンゴの回復に役立つのではと研究グループは期待している。
サンゴは、ほとんどが体の中に「褐虫藻(かっちゅうそう)」と呼ばれる微小な藻類(植物プランクトン)を持っていて、生きていくのに必要な栄養の一部をその共生する褐虫藻から得ている。
白化は、サンゴが体内に共生する褐虫藻を失ってしまって真っ白に変色し、やがて死に至る現象のこと。世界各地で発生し、たとえばオーストラリアの北東岸に拡がる世界最大のサンゴ礁として知られるグレートバリアリーフでは白化をどう防ぐかが深刻な課題となっており、日本でも沖縄県で大規模な白化が発生している。
しかし、サンゴは生きていくのに不可欠な褐虫藻を海中でどのようにして得ているのかは、これまで解明されていなかった。
GFPは、クラゲから見つかった、光を当てると光る蛍光たんぱく質の一種。見つかったのは1960年代で、発見した日本人研究者の故・下村脩氏はその功績によりボストン大学名誉教授だった2008年にノーベル化学賞を受賞している。
今回研究グループは、サンゴが持っているそのGFPの働きを初めて明らかにしたもので、遊泳している微小な褐虫藻がGFPからの光を浴びるとサンゴに引き付けられるのを実験装置内で発見した。
実験では、青色光の下で緑色蛍光を放つ生きたサンゴの周囲に褐虫藻が集まってくるのを確認しており、比較のために置いたGFPを持たない死んだサンゴの骨格には褐虫藻が集まらないことが分った。
この結果から研究グループは「サンゴの緑色蛍光が褐虫藻の誘引に働くことが明らかになった」とし、「もしかすると、緑色蛍光による褐虫藻の誘引は、白化からの回復に重要な役割を果たしているかもしれない」と見ている。