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結晶?液晶?液体?―どれにも分類できない新物質:東京工業大学/理化学研究所/高エネルギー加速器研究機構ほか

(2019年1月21日発表)

 東京工業大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの研究グループは121日、結晶や液晶、液体のいずれにも分類できない新物質を発見したと発表した。分子間に働く力によって自発的に集合する液滴状の有機物質で、規則的な分子構造を保ちながら液体のような流動性を持つという。革新的な高機能性有機材料を開発する手がかりになると期待している。

 東工大の梶谷孝特任教授、福島孝典教授らが高エネ研や(国)理化学研究所、東北大学などと共同で明らかにした。

 新物質は一般に「亀の甲」と呼ばれる炭素原子が6つ結合した六角形のベンゼン環が平面状に4つ結合した平面状分子に、別の化学構造「アルコキシル基」を結合させた有機分子「トリフェニレン誘導体」。立体構造が右手と左手のような関係にあるキラル構造を持っているため、その構造と性質を詳しく調べた。

 その結果、初めは粉末状だった物質は加熱されると融解するが、冷却されると液滴状に固まったという。そこでこの液滴の分子配列をX線で解析したところ、平面状分子のトリフェニレン誘導体がいくつも平面状につながり、さらにそれらが何層にも重なって単結晶のような3次元構造を形成していることが分かった。

 そこで、さらにこの液滴状物質の性質を詳しく調べた。その結果、傾けた板の上に置くと流れ落ちる流動性を示した。ただ、その際にも液滴中の規則的な3次元構造は崩れることがなかった。また、流れ落ちる際には液滴が一方向に回転していること、そのときの回転方向はトリフェニレン誘導体が持つ右手か左手かというキラル構造によって決まっていることなども分かった。

 研究グループは「既存の概念では説明できない分子集合体の自発的な超長距離構造秩序形成と動的性質が明らかになった」としており、今後こうした分子の自己組織化に基づく高機能有機材料の開発に道が開けると期待している。