乾燥を受けた樹木が枯れて死に至る生理過程を解明―地球温暖化の森林への影響を高精度に予測できる:京都大学/森林総合研究所
(2019年1月23日発表)
京都大学と(国)森林総合研究所の研究グループは1月23日、共同で乾燥を受けた樹木が枯れて死に至る生理過程を解明したと発表した。
地球温暖化は、森林の生態系に大きな影響をもたらす。近年世界各地で熱波や乾燥による樹木の枯死(こし)や森林の衰退が相次いで報告されているが、その大きな原因は地球温暖化による気候変動のためと考えられている。
このまま進むと日本でも国土の約7割を占めている森林の生態系に大きな変化が生じるとされ、たとえば温帯林の代表ともいえるブナの林がやがて九州から関東にかけて無くなってしまうのではないかとする心配もでている。
このため、将来の森林生態系の変化を予測し、保全を図っていくには、樹木がどのように乾燥による障害を受けて枯死しているのかを明らかにすることが必要で、これまで発生原因として樹の体内を水が通りにくくなって生じる「通水欠損仮説」と、糖が欠乏して飢餓状態になって起こる「糖欠乏仮説」の2つが言われてきた。
今回の研究は、世界自然遺産である太平洋上の小笠原諸島(東京都)の兄島で小笠原在来種のアサ科(麻科)の樹木「ウラジロエノキ」290個体について樹体内の水の通りやすさや糖の輸送能力、内部に蓄積されている糖の量の変化を1年間にわたって追跡調査するという方法で行った。
その結果、乾燥のストレスがかかると、初期には水を通す管である道管の水切れが進んで樹木体内の水の通りが悪くなり、最後に糖が欠乏して枯死に至るという2つの障害が段階的に共に生じるメカニズムであることが分った。
この新たに判明した生理メカニズムに基づいて様々な樹種で乾燥枯死のしやすさを明らかにしていくことで、地球温暖化による森林への影響予測の精度を高めていくことができるものと研究グループは見ている。