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「中間子束縛原子核」の生成実験に世界で初めて成功―クォークと反クォークが共存し結合状態は極めて高密度:理化学研究所ほか

(2019年1月24日発表)

 (国)理化学研究所の国際共同研究グループは124日、素粒子のクォークと反クォークが共存する「中間子束縛原子核」の生成実験に世界で初めて成功したと発表した。核子の質量の起源や、中性子星の中心部にできる超高密度核物質の解明などの基本的理解への貢献が期待されるという。

 原子核は、核子と呼ばれる陽子と中性子から成ると考えられてきた。これらの核子を原子核内に強固につなぎとめる役をしている中間子は、強い力を担っている粒子で、核子とは異なる。

 ところが、量子力学の不確定性原理に従う仮想粒子の中間子を真空中に取り出すと、固有の質量と寿命を持った「実粒子」としても振る舞う。このため、中間子が実粒子として、核子とともに原子核を構成する量子状態が存在するのだろうかという疑問が抱かれてきた。

 中間子はクォークと反クォークの対でできており、核子は3つのクォークから成る。もし、中間子が、核子に密に取り囲まれた原子核中で実粒子的な性質を保った束縛状態(結合状態)を作るなら、反クォークとクォークが共存するという、これまでとは原子核像が異なる新しい原子核が形成されたことになる。

 国際共同研究グループは今回この束縛状態の生成を確かめるため、K中間子と2つの陽子(p)が結合した中間子束縛原子核“Kpp”を作り出す実験を試みた。実験は大強度陽子加速器施設J-PARCで、K中間子ビームをヘリウム3原子核に照射した。その結果、この照射反応により“Kpp”中間子束縛原子核状態と中性子が作られたことが確認された。

 この状態の束縛エネルギーは50MeV(メガ電子ボルト)であり、これは通常の原子核の束縛エネルギーの約10倍に達し、かつK中間子の質量エネルギーの10%に達することが分かった。ここから、この結合状態はコンパクトな高密度状態であることが予想され、極めて特異的な高密度物質が自発的に形成されたと考えられ、実際にそれを示唆する実験データも得 られたという。

 研究グループは今後、より大きな原子核との束縛状態や、複数のK中間子の束縛状態の探査検証実験を通して、巨大な質量などに関する宇宙形成進化の謎に迫りたいとしている。