オス同士が殺し合うハダニ―攻撃性の進化明らかに:筑波大学ほか
(2019年1月25日発表)
筑波大学と流通経済大学は1月25日、ハーレム作りを巡ってオス同士が殺し合いをするハダニが1万年前まで続いた最終氷期に琉球列島を通って南から日本に渡ってきたことが明らかになったと発表した。その過程でハダニは攻撃性の強さの異なる3タイプに分かれたとみられ、ハダニの進化が日本列島の歴史と連動したダイナミックなものであることが明らかになった。
筑波大の佐藤幸恵助教と津田吉晃准教授、流経大の後藤哲雄教授が、茨城大学と北海道大学、(国)農業・食品産業技術総合研究機構のほか中国、台湾、オランダの大学、研究機関と共同で明らかにした。
調べたのは、ススキに寄生し集団で巣をつくるススキスゴモリハダニ。体長が0.5mmより小さい節足動物で、ススキの葉の裏などに糸を張ってトンネル状の巣をつくる。このハダニはメスを獲得するためオス同士が戦うだけでなく、時に殺し合いまでする珍しい動物の一つとされている。
ただ、オス同士が殺し合う頻度は生息場所によって異なる。そこで研究グループは台湾や中国など近隣諸国にも調査対象を広げ、オス同士の闘争がどのように進化してきたかを遺伝子DNA配列なども含めて解析した。
その結果、ハダニは攻撃性の強さで少なくとも3タイプに分かれ、主な生息域も異なることが分かった。また、沖縄本島の南、宮古島から台湾にかけて生息する攻撃性のマイルドなハダニが最も古い祖先的集団で、攻撃性が弱い集団と強い集団はそれぞれ最終氷期の2~4万年前と5千~1万年前にマイルド集団から生まれたと推定された。
ハダニが寄生するススキは1万4千年前頃に南から日本列島に入って分布を広げてきたことが既に報告されている。そのため、ススキの分布拡大に伴ってまず攻撃性の弱い集団が、その後にマイルドな集団が日本列島に侵入、それから強い集団が5千~1万年前に誕生して分布を広げ弱い集団を山の上に追いやったとみている。
その結果、現在西日本で見られるような強い集団と弱い集団がすぐ近くに分布する状態が生まれたと研究グループはみている。今後、なぜオス同士の闘争が殺し合いにまでエスカレートしたのかなどについて検証していきたいとしている。