生活空間のニオイを識別するガスセンサーを開発―携帯型センサーや、健康モニタリング装置にも応用へ:産業技術総合研究所
(2019年1月28日発表)
(国)産業技術総合研究所の増田佳丈研究グループ長らは1月28日、室内に充満している複数の不快なニオイ(妨害ガス)の中から、呼気や体臭による特定のニオイだけを識別できるガスセンサーを開発したと発表した。住宅室内や自動車内などに溜まっている嫌なニオイを識別し、換気装置と連動させる環境改善システムなどに繋げる。将来は呼気から健康状態もチェックできるモニターの開発も検討している。
ニオイセンサーは湿度に弱い弱点がある。閉め切った室内や車内は湿度が高く、これまでの半導体センサーでは特定のニオイの識別は難しかった。
産総研が開発したのは「バルク応答型センサー」。従来の半導体式センサーと同じように電気抵抗値からガス濃度を測定する。検出できるガスの種類は少ないものの、湿度の影響を受けにくい利点がある。半導体式センサーは、湿度が高いと識別能力が低下するが、検出できるガスの種類が多かった。
産総研は性質の異なる複数のセンサーを組み合わせてガスの識別能力を高めた。酸化物ナノ構造や表面触媒特性が異なる2種類の「バルク応答型センサー」と、6種類の一般的な「半導体センサー」を多重に組み合わせたところ、高湿度下でもニオイが判別できる能力を飛躍的に高められた。
このセンサーの効果を実証するため、人の呼気などに含まれる4種類のガス(ケトン類、ノナナール、アセトン、デカン)を相対湿度60%の合成空気に混ぜ、ガスセンサー試料室に流し測定した。また妨害ガスとして室内にたまるガス種を再現した31種類のガスを混合し、濃度を4段階(0〜900μg/m3)に変えて測定。この信号を機械学習の一種である主成分分析(PCA)を使って解析した。
その結果、湿度の影響を受けずに識別能力が向上し、人の呼気に含まれる4種類全てのガスが識別ができた。また体臭を含む不快臭とその濃度も識別できた。
今後、換気装置と連動させて不快なニオイだけを除去するシステム開発や、ポータブル型のニオイセンサーの実用化を目指すことにしている。