柔軟性・成形性・加工性の良い新断熱材の量産法を開発―企業へのサンプル提供を開始し実用化目指す:新エネルギー・産業技術総合開発機構/イノアック技術研究所/産業技術総合研究所
(2019年1月28日発表)
(国)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と(株)イノアック技術研究所、(国)産業技術総合研究所は1月28日、柔軟性・成形性・加工性の3拍子揃った高性能新複合断熱材の量産プロセスを共同開発したと発表した。長さが30mに達する長尺のロール状断熱材を作ることに成功しており、企業へのサンプル提供を開始し実用化につなげたいとしている。
現在実用になっている中で最も断熱性が優れているのは、材料の内部を真空にした真空断熱材だといわれ、省エネルギー化や熱マネジメントの高まりでさまざまな分野に使われている。
だが、真空断熱材もオールマイティーではなく、内部を真空に保つ必要があるために薄い板材にすることが難しいほか、曲面を含むようなところには使えない、などといった問題を抱えている。
このため、真空を利用しない新たな高性能断熱材が求められ、空隙の割合が90%以上に達するシリカエアロゲルと呼ばれる多孔質のシリカゲルを不織布やポリマーなどと複合化した非真空断熱材が商品化され利用が始まっている。
しかし、シリカエアロゲルは、断熱材にうってつけの非常に低い熱伝導率の材料ではあるものの、柔軟性がなく機械的強度が低いために脆く、シリカ(二酸化ケイ素)が壊れて粉状になる(粉落ち)などの弱点があり広く普及するまでに至っていない。
産総研とイノアック技研は、その難点のある低熱伝導率シリカエアロゲルを軽量・高強度のポリプロピレンと複合化することにより粉落ちしない柔軟性と成形性と加工性の3拍子揃った「フレキシブルエアロゲル」にすることに成功、量産プロセスの開発をNEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」のテーマとして2017年度から行ってきた。
これまでのシリカエアロゲルとポリマーの複合断熱材は板状で、製造には超臨界乾燥と呼ぶ乾燥処理を圧力容器の中で一回ごとバッチ処理(回分処理)で行う方式がとられている。共同開発したフレキシブルエアロゲルの量産プロセスは、その超臨界乾燥をロール状に巻いた状態で行えるようにして長尺化を実現したもので、真空断熱材に近い低い熱伝導率を持った断熱材が作れ、長さ30m、幅40cm、厚さ2mmのロールを得ている。
得られたシート状のフレキシブルエアロゲルは、曲げられるほどの柔軟性があって、プレスで熱成形できることも確認しているという。