ミドリムシが硫化水素ガスを発生させる原因を解明―バイオ燃料の生産性を高め、悪臭の抑制に道を開く:ユーグレナ/理化学研究所ほか
(2019年1月30日発表)
(株)ユーグレナと(国)理化学研究所、筑波大学は1月30日、ミドリムシ(学名、微細藻類ユーグレナ)が油類を生産する際に発生する悪臭について、細胞内のたんぱく質とグルタチオン(グルタミン酸と硫黄を含む化合物)が分解して硫化水素ガスを出すことが原因と発表した。今後、悪臭の発生を抑える対策につなげるとともに、ミドリムシからバイオ燃料の効率的な生産にも役立てられると期待している。
ミドリムシはワカメや昆布と同じ藻類の仲間で、植物のように光合成の働きを持ち、栄養分を体内に貯めると共に、動物のように細胞を変形させて移動するという不思議な微生物だ。
人間が必要とする貴重な栄養素を多量に持っていることが知られ、ユーグレナ社が2005年に大量生産に成功し、健康食品として商品化した。
また酸素が不足した状態では細胞内に貯めた炭水化物を分解してエネルギーを獲得し、不要なものはワックスエステルという油脂の形で蓄積することからバイオ燃料としても注目を集めるなど、小さな生命体に大きな期待がかかっている。
ところが油脂を蓄積する際に悪臭が発生することから、研究チームは微量の硫黄化合物のガスを高感度で正確に分析し、悪臭発生機構にを明らかにした。
細胞内に含まれる硫黄化合物量の変化を調べたところ、グルタチオンやたんぱく質が分解されて含硫アミノ酸が増える変化が起こり、この含硫アミノ酸が分解したときに硫化水素が発生する仕組みを見つけた。これによって悪臭の発生を抑える見通しがついた。
また残渣(ざんさ)に含まれるたんぱく質を増やせば、ミドリムシを飼料としても利用できることも分かり、健康食品、バイオ燃料、飼料の一石三鳥の成果につながるとしている。