キクタニギクのゲノムを解読―栽培ギクの起源を明らかにし、品種改良や高精度の栽培に役立てる:かずさDNA研究所/農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2019年2月4日発表)
キクタニギク
(広島大学理学研究科附属植物遺伝子保管実験施設
中野道治先生 提供)
(公財)かずさDNA研究所は2月4日、(国)農業・食品産業技術総合研究所などと共同で、キクタニギクのゲノム(全遺伝情報)の解読に成功し、栽培ギクのゲノム配列の検出を可能にしたと発表した。栽培ギクは昔から電照によって開花を調整してきた。開花の遺伝子配列を解明し、メカニズムを明らかにすることで、より精度の高いキクの栽培法や効率化、品種改良が進むと期待される。東京大学、広島大学、日本大学との共同研究による。
日本の切り花市場で栽培ギクの取り扱いは約40%を占め、バラやカーネーションと並んで代表的な花き商品になっている。栽培ギクは多くの野生ギクが交雑を繰り返し品種として成立したため複雑なゲノム構造をしている。このためゲノム構造が単純な二倍体のキクタニギクをキクのモデル植物に選んだ。
キクタニギクはキク科の多年草で、東北から九州にかけて自生し、秋に黄色い花をつける。
広島大学が発見した品種を基に解析に適したキクを作り、かずさDNA研究所、農研機構野菜花き研究部門と東京大学、日本大学で生育、開花に関わる遺伝子を探索した。ゲノムサイズは農研機構で、栽培キクゲノムの配列変異の検出はかずさDNA研究所が担当した。
解読された配列から推定された遺伝子数は7万1,057個で、このうち開花に関わる遺伝子221個を見つけた。
キクタニギクの茎頂で見つけた新たな遺伝子は、季節変動に応じて開花、休眠を制御する遺伝子の可能性があるとみられる。これが解明できれば照明や温度を変えて開花時期の調整にも役立つとみられる。
また同じキク科のヒマワリやレタスなどの遺伝子配列と比較したところ、キクタニギクはヒマワリとより近縁で、4,600万年前にこの2つが分岐したと推定できた。