廃水中のカーボンナノチューブを次亜塩素酸化物で除去―排出水の安全・安心な処理、工業的に可能に:産業技術総合研究所
(2019年2月4日発表)
(国)産業技術総合研究所は2月4日、産業廃水中に含まれるナノ炭素材料のカーボンナノチューブ(CNT)を簡便に効果的に除去できる技術を開発したと発表した。CNTの産業利用の拡大・進展に伴い、高いレベルの環境保全対策や安全性確保が求められるが、そうした要請への対応が期待できるという。
開発したのは、次亜塩素酸化合物を用いてCNTを完全分解する技術。CNTの生分解を調査・研究していた際に、次亜塩素酸によってCNTが酸化・分解されることがわかった。そこで、研究グループは今回次亜塩素酸や次亜塩素酸化合物と反応させて処理する方法を試みた。
CNTを水に分散させた溶液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加えたところ、CNTの分散で当初は黒色を呈していた溶液の色が、徐々に薄くなり、最後に完全に透明になった。光吸収法により溶液中のCNT濃度を定量測定したところ、CNTが時間とともに減少し、最後にほぼゼロになることが分かった。
未反応の次亜塩素酸ナトリウムを取り除いて処理水の成分を調べたところ、炭素量は検出限界以下で、CNTは完全に分解されており、無害のナトリウムイオン、塩素イオン、炭酸イオン(CO3-2)の生成が認められた。
実験に使用した次亜塩素酸ナトリウムの濃度は家庭用漂白剤などに含まれる濃度よりも低く、安全な処理・処分の可能性が確認されたという。
ナノ炭素材料は各種の優れた特性を持つことから世界中で用途開発が進み、一部実用化され始めているが、環境に排出された場合の影響については明らかでない点があり、環境中への放出を抑えることが重要とされている。