難治性血管炎の肺炎合併症―特定の遺伝子変異が関係:筑波大学ほか
(2019年2月14日発表)
筑波大学と東京女子医科大学は2月14日、国が指定する難病の一つ、難治性血管炎の患者に間質性肺炎が起きやすいのは特定の遺伝子変異が関係していると発表した。難治性血管炎の合併症として起きる重い間質性肺炎は有効な治療法が確立していないが、特定の遺伝子変異との関係が分かったことで新しい治療薬の開発などに道がひらけると期待している。
研究対象にした難治性血管炎は、免疫細胞の一つである好中球を自分の免疫システムが攻撃して起きる難病「抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎」。間質性肺炎を合併症として起こしやすく、有効性の高い治療法も確立していないという。
筑波大の川﨑綾助教と土屋尚之教授らと東京女子医大の針谷正祥特任教授らの研究グループは、肺の細胞表面から分泌される主な粘液「分泌型ムチン(mucin 5B)」を作る遺伝子に注目、健常者842人と難治性血管炎の患者474人について遺伝子変異が起きていないかを調べた。
その結果、両親から受け継いだ一対の染色体のうちの一本に、遺伝情報を記録する文字「塩基」が一つだけ置き換わる一塩基多型と呼ばれる変異が起きている割合が健常者と患者で異なることが分かった。健常者では1.1%だったのに対し、間質性肺炎の合併症を起こしている患者では4.3%と明らかな差があった。一方、合併症を起こしていない場合、その割合は0.4%と健常者と変わらず、この一塩基多型が難治性血管炎自体とは関連していないことも分かった。
この一塩基多型は、免疫の異常が関係する難病の関節リウマチや突発性肺繊維症でも重い間質性肺炎との関係が報告されているが、難治性血管炎患者に起きる間質性肺炎の合併症とも関連していることが分かったのは今回が初めてという。
この成果によって、将来的には「間質性肺疾患合併の分子機構の解明や診断・治療法の開発に結び付く」と研究グループは期待している。