[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

遺伝子選抜で地鶏の体重増やすことに成功―4つの県の試験研究機関と共同で開発:農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2019年2月18日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は218日、秋田県畜産試験場など4県の試験研究機関と共同で、遺伝子選抜により地鶏(じどり)の発育を向上させ体重を増やすことに成功したと発表した。全国の地鶏に利用できると期待されることから、4県の試験研究機関は遺伝子選抜を行った種鶏(しゅけい)を来年度以降順次孵化場に供給していく予定という。

 地鶏とは、日本農林規格(JAS)が定める条件を満たすニワトリのことで、地域の特産品として定着し、ブロイラーより高値で取引されている。

 しかし、飼育期間が長く生産にコストがかかるという難点があって発育をもっと良くすることが課題になっており、農研機構はそれに対応しようと2012年に秋田畜産試験場との共同研究で秋田県産の「比内地鶏(ひないじどり)」の発育性に関連する遺伝子(コレシストキニンA受容体遺伝子)が、ある特定の遺伝子型を持つと発育性が向上することを見つけている。

 今回の成果は、それをもとに得たもので、4県それぞれの地鶏のルーツになっている種鶏を特定の遺伝子型で選抜(遺伝子選抜)し、それぞれの地鶏の発育性の向上とそれに伴う体重の増加を調べた。共同研究には、秋田畜産試験場のほか、岐阜県畜産研究所、熊本県農業研究センター畜産研究所、宮崎県畜産試験場が参加した。

 研究に使ったのは、比内地鶏と岐阜県の「奥美濃古地鶏(おくみのこじどり)」、熊本県の「天草大王」、宮崎県の「みやざき地頭鶏(みやざきじとっこ)」。

 その結果、これまでよりいずれも体重が増え平均値で「比内地鶏」は59.7g、「奥美濃古地鶏」はメスで71.9g、オスで40.2g、「天草大王」はメスで222.0g、オスで126.6g、「みやざき地頭鶏」はメスで92.5g、オスで71.8g、それぞれ増加することが分かった。

 農研機構によると4県からは2017年度1年間に125万羽の地鶏が出荷されており、それらを遺伝子選抜で生産したとすると「4県合計で年間約6,600万円の生産者の売り上げ増加が見込まれる」とメリットを試算している。