原子時計の超省エネ化・小型化に成功―自動車やスマートフォン、小型衛星などに搭載可能に：東京工業大学/リコー/産業技術総合研究所
(2019年2月19日発表)
東京工業大学と（株）リコー、（国）産業技術総合研究所の共同研究グループは2月19日、これまでのものに比べて消費電力が極めて少なく、サイズが小さい原子時計を開発したと発表した。これまで不可能だったスマートフォンのような小型電子機器や自動車、小型衛星などに原子時計を搭載できるようになるため、車の自動運転や高精度な測位など、超スマート社会に向けた利用が期待されるという。
原子時計は、決まった周波数の電磁波を吸収・放射する原子の性質を応用したもので、一般の時計に使われている水晶発振器と組み合わせて用いられている。誤差が数千年から１千万年に1秒程度と極めて小さい。
原子時計自体は現在のところ大型であるため、原子時計を時刻の基準として用い、水晶発振器を同期させることで時刻を得ている。原子時計を小型化できれば水晶発振器の代わりに利用できる。
研究グループは、マイクロ波を照射する共振器が大型化の原因となっていることから、代わりにレーザー光を利用する方式を先に考案し、原子時計のサイズを1桁以上小型化することに成功した。しかし、消費電力が大きいという問題を抱えていた。
そこで今回、消費電力を抑える技術を新たに開発し、小型電子機器などに搭載できる超省エネ・小型の原子時計を作製した。
構成部品の一つである周波数シンセサイザの消費電力を大幅に削減、また、原子時計の心臓部にあたる量子部パッケージを小型・集積化し、温度制御の効率を向上させ、60mWという低消費電力と、15cm3という極小サイズ化を実現した。
消費電力、サイズとも従来より1桁以上小さく、周波数安定度は従来の大きな原子時計と同等という。
今回の開発によって原子時計を様々な機器に搭載できるようになるため、政府が進めるIoTが支えるソサエティ5.0（超スマート社会）の実現に貢献することが期待されるという。5年後を目途に販売を開始したいとしている。
