コムギの粒の数を制御する遺伝子見つける―「きたほなみ」の多収性の理由が判明:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2019年2月22日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構と鳥取大学は2月22日、共同でコムギの粒の数(粒数)を制御する遺伝子を見つけ、多収性のコムギ品種として知られる「きたほなみ」の多収性にはこの遺伝子が寄与していることが分ったと発表した。
コムギは、世界3大穀物の一つで、農水省調べによると日本の平成30年のコムギ収穫量は768,100t。だが、日本のコムギ自給率は約14%と高くなく、多くを海外に依存している状況にある。
「きたほなみ」は、従来の北海道産コムギの主力品種「ホクシン」に続く新品種として期待され近年栽培量が増えている多収性のコムギで、耐病性に優れ、パン、麺だけでなく菓子類にも使われている。
農研機構は、前身の農業生物資源研究所だった2007年にオオムギの粒数を多くする「Vrs1」と呼ぶ遺伝子を見つけており、麦類の遺伝子は類似性が高いことからコムギにもオオムギと同様に粒数を多くする遺伝子が存在するのではないかと予想して今回の研究を行った。
研究は、北海道立総合研究機構、ドイツのライプニッツ植物遺伝学・作物研究所、イスラエルのヘブライ大学の研究グループなどが参加して行われ、マカロニやスパゲッティ作りに使われるたんぱく質に富むコムギ「デュラムコムギ」から「GNI1(ジーエヌアイワン)」という粒数を制御する遺伝子を見つけ出すことに成功した。
このGNI1遺伝子によりたんぱく質の105番目のアミノ酸がアスパラギンからチロシンというアミノ酸に変わるとその変化によってDNA(デオキシリボ核酸)結合機能と呼ばれる機能が弱まって粒数が増加することを見つけたもので、実験圃場で収量性を調べたところ一つの穂当たりの粒数が約10%多くなって10~30%コムギの収量が増えることが分かった。
また、「きたほなみ」のGNI1遺伝子に突然変異を誘発させて105番目のアミノ酸がアスパラギンになっている系統を作り出しチロシンの系統と圃場試験で比較したところチロシン型の系統の方が一穂当たりの粒数が約10%多くなる結果が得られ、「きたほなみ」の多収性にGNI1遺伝子が大きく寄与していることが確認されたとしている。