カメムシ類に特有の免疫の仕組みを発見― 環境にやさしい農薬の開発へ期待が高まる:農業・食品産業技術総合研究機構
(2019年2月25日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は2月25日、柑きつ類やナシ、カキ、ウメなどの主要果樹に付く害虫として知られるカメムシ類の特異な免疫機構を発見したと発表した。受粉を助けるハチやチョウなどの有用昆虫には影響を与えず、カメムシだけにダメージを与える農薬の開発に応用できると見ている。
昆虫には、多くの動物とは異なる免疫システムがある。これは全ての昆虫に共通のものとみられていたが、次世代シーケンサー(遺伝子解析装置)で詳しく解析したところ、カメムシ目の免疫機構は他と異なる独特のものであることが分かった。
カメムシの仲間はアブラムシやウンカ、キジラミ、コナジラミなど農業被害の元凶となる害虫が多い。そこで柑きつ類をはじめナシ、カキ、ウメなど果樹全般の害虫であるチャバネアオカメムシの免疫機構の解明を(国)産業技術総合研究所と共同で取り組んだ。
ショウジョウバエなどのモデル昆虫の免疫システムは、主にたんぱく質のPGRP(ペプチドグリカン認識たんぱく質)が細菌を感知することで免疫が働く。チャバネアオカメムシに、PGRPの働きを抑えて大腸菌を注射したところ抗菌性ペプチドの生産量が減り、免疫応答が低下した。
また植物の細菌感染認知は知られているが、昆虫での機能がわかっていなかったLysMについて、発現を抑えたところカメムシの抗菌性ペプチドの生産量が下がった。このことからチャバネアオカメムシはPGRPと同様にLysMも細菌の侵入を認識して、免疫の働きを活性化させていることが示された。
LysMを持った遺伝子はカメムシ以外の昆虫からは見つかっていない。この働きを抑える物質を作り出せば、カメムシだけにダメージを与え他の有用昆虫には影響を与えないという、環境にやさしい農薬の開発に応用できるとみている。