融けずに機能する蓄熱材料を開発―電子機器や構造材料に組み込んで熱を有効活用へ:産業技術総合研究所
(2019年2月28日発表)
(国)産業技術総合研究所は2月28日、高い蓄熱密度を持ち、しかも緻密で堅牢(けんろう)な蓄熱材料を開発したと発表した。優れた蓄熱能力を持つ二酸化バナジウムを焼き固めたもので、融けずに機能するため、電子機器や構造体などでの有効活用が期待されるという。
近年、熱を溜めて必要な時に利用する蓄熱技術への関心が高まり、保冷材などに使われている相変化型材料を蓄熱材料として利用する技術の研究開発が活発化している。
蓄熱材に利用できる相変化には氷と水のような固体―液体間の相変化だけではなく、金属と絶縁体間の相変化、強磁性と常磁性間の相変化などがある。研究グループが取り上げたのは、こうした相変化型材料の一種で、相変化中に融解しない二酸化バナジウム。
ただ、二酸化バナジウムは工業的な供給形態が粉末に限られており部材として扱いにくく、焼結が困難で、加圧して強制的に固化すると結晶にひずみが生じ潜熱が減少する、などの難点があった。
研究グループは今回、酸化バナジウム系以外の補助材料を添加しなくても焼結が著しく進行する出発粉末の調整方法を考案、この出発粉末を焼結することによって、高い蓄熱密度と堅牢性を兼ね備えた二酸化バナジウム主成分の相変化蓄熱材料を作り出すことに成功した。
得られた材料は機械強度が大きく緻密で堅牢であり、切削などで容易に任意の形状に加工できる。成形が自在なので電気・機械部品や構造部材に直接組み込んで未利用熱を有効利用できる。融けて機能する従来型の潜熱蓄熱材と異なり、新部材は容器に入れなくとも使えるので無駄な熱喪失(そうしつ)がない。ある種の元素の添加により、蓄熱動作温度を制御できる、などの優れた特性や機能があるという。
研究グループは今後、利用目的に合わせて特性を調整できるように材料設計を進め、活用を促進したいとしている。