ウニも人間も類似の仕組みで腸の幽門開口を制御―動物の進化の過程研究するのに役立つ:筑波大学
(2019年3月1日発表)
筑波大学は3月1日、海に生息するウニも人間も類似の仕組みで腸の幽門の開口を制御していることが分かったと発表した。食べた食物が必ず通過する体内のいわば“関所(せきしょ)”にあたるのが幽門(ゆうもん)。その門の開け閉めの仕組みが脊椎(せきつい)動物の人間と棘皮(きょくひ)動物のウニとで似ていることが分った。動物の進化の過程を研究するのに役立つものと期待される。
動物は、口から得た食物を消化管で消化して栄養分を吸収しているが、消化管には吸収効率を上げるために門があり、胃と十二指腸の間にある細くくびれている部分が幽門。胃に食物が入った時点では幽門は閉じているが十分に消化されるとその門が開き(開口)、消化された食物は腸へと流れていく。人間を含む脊椎動物の場合、こうした胃や腸といった消化管のコントロールは、神経堤細胞と呼ばれる細胞由来の腸管神経の働きによって行われていることが知られている。
しかし、神経堤細胞は脊椎動物でしか見られないため、消化管制御の仕組みが動物の進化の過程でどのように獲得され、多様化してきたのかは分かっていない。
研究グループは、神経堤細胞を持たない棘皮動物に属すバフンウニの幼生がほとんど透明で消化管に神経様細胞が見られ、胃に入った食物が腸にまで簡単に素通りしないで幽門の開閉で制御されているように見えることから、ウニ幼生の幽門の開閉制御機構の解明を目指し研究を行なった。
人間を含む脊椎動物は、幽門の開口を一酸化窒素を利用して行っている。研究では、SNAPと呼ぶ一酸化窒素発生剤で幼生を処理しそれによる変化をまず調べた。すると、平常は閉じている幼生の幽門がほぼ100%開くことが分かった。そして、実際に幼生の幽門付近には、神経様細胞が存在して一酸化窒素を作り、それにより脊椎動物と同様に幽門の開口を制御していることを確認した。
脊椎動物以外の動物で腸の幽門開口に一酸化窒素が使われていることを見つけたのはこれが初めてという。
筑波大は、この結果について「幽門開口の制御システムが進化の過程でどのように神経提細胞由来のシステムへと移行していったかを議論する上で重要なヒントを与える成果」だといっている。