福島原発事故で飛散した放射性微粒子の溶解挙動を解明―粒子内の放射性セシウム10年程度で海水に溶け出す:東京大学/農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2019年3月5日発表)
東京大学と(国)農業・食品産業技術総合研究機構、日本原子力研究開発機構の研究グループは3月5日、福島原子力発電所事故で放出された放射性セシウムを含むガラス質の微粒子が、海水によく溶解し、ガラス中の放射性セシウムが10年程度で海水中に溶け出すことが分かったと発表した。
海水中の放射性セシウム濃度は現在検出下限値未満なので、溶解による環境への影響はないと考えられる、としている。
福島原発事故では大量の放射性セシウムが大気中に放出されたが、最近の研究で、その一部は珪酸塩ガラスから成る大きさ数ミクロン(µm (マイクロメートル、1µmは100万分の1m ) )以下の微粒子に封じ込められた状態で飛散したことが分かった。
この微粒子はごくわずかずつではあるが水に溶けることから、研究グループは環境への影響が懸念される微粒子の溶解挙動に着目、環境中から微粒子を採取して、水中における微粒子の溶解の進み方などを調べた。
その結果、この微粒子は純水よりも海水によく溶け、海水中での溶解速度は純水中に比べ一桁以上大きいことが分かった。また、半径1µm程度の海水中の微粒子は、10年程度で完全に溶解する可能性があることを見出した。電子顕微鏡で溶解を観察したところ、微粒子は溶解によって明らかに小さくなっており、放射性セシウムが溶解で水中に溶け出すことが確認された。
微粒子に関する今回の調査結果は、原発事故による放射線の影響評価や汚染実態の新たな解明・解決に役立つとしている。