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モチモチした食感のうどん作れる小麦の新品種を開発―温暖地西部での栽培に適し、多収で製粉性に優れる:農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年3月5日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は35日、うどんなどに使う日本めん用小麦の新品種を開発したと発表した。温暖地西部での栽培に適し、多収で製粉性に優れ、モチモチとした食感のうどんが作れるという。滋賀県は、この新品種を奨励品種に採用する予定で、すでに種子の生産が開始されており、2021年には3,000ha(ヘクタール、1ha1万㎡)の畑で栽培される予定になっている。

 温暖地西部で栽培されている日本めん用小麦は、「農林61号」や、「シロガネコムギ」など。中でも「農林61号」は、戦時中の1944年に佐賀県農業試験場で開発され、以来ずっと北関東から九州にかけ作られ続けてきた長寿品種だが、難点がある。現在うどん用には、オーストラリアから輸入される小麦「オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW)」が多く使われているが、それより製粉性(小麦粉の歩留り)が劣ることだ。

 このため、「農林61号」に替わる製粉性の良い温暖地西部に適した日本めん用小麦の新品種が強く求められている。

 それに応えられるものを目指し開発されたのが今回の新品種。早生(わせ)で製粉性に優れる小麦の「中国153号」と、多収で製粉性、製めん性の良い北海道の品種「北見81号」(後の「きたほなみ」)との交配で得た。

 新品種の名称は、「びわほなみ」。小麦の穂が琵琶湖が波打つほどに育つことを込めて名付けたという。「農林61号」より収量が1割以上多い早生品種で、稈長(かんちょう)と呼ばれる地表から穂までの茎の長さが81cmと「農林61号」の88cmより短いため倒れ難い。

 製粉性を示す製粉歩留は、西日本農研が実施した試験によると75.1%で、ASW72.7%を上回っている。他の機関が測定した「農林61号」の値は64%台だった。

 また、小麦粉はでんぷんの一成分であるアミロースが少ないと粘りが増して得られるうどんがモチモチした食感になることが知られているが、新品種「びわほなみ」で得た小麦粉中のアミロース含量は20.8%と「農林61号」、「シロガネコムギ」の24%弱を下回ることを確認している。

 ただ、弱点もある。麦類の最重要病害とされている赤かび病に弱いことで、「適期防除を徹底する必要がある」と農研機構はいっている。

 2018年の県別小麦生産量は、北海道が別格の1位で、2位が福岡県、3位が佐賀県で、滋賀県は8位。温暖地西部に入る県が上位10県中に6県も入っているだけに、新品種「びわほなみ」は広く普及するのではと期待される。