恐竜時代の巨大カルデラの中に生まれた播州赤穂:産業技術総合研究所
(2016年8月8日発表)
「播州赤穂」地域の地質図幅の一部(一部修正、加筆)
図中の実線がコールドロン縁で、破線は推定。
(国)産業技術総合研究所の地質調査総合センターは8月8日、赤穂市を中心に兵庫県から岡山県にまたがる地域の詳細な地質調査をまとめ、「播州赤穂地域の地質」を刊行したと発表した。恐竜がのし歩いた約8,300万年前の後期白亜紀に、この地域で複数の火山噴火が起き、当時あった幾つものカルデラを埋めるように大規模な火砕流堆積物が広く分布していることを明らかにした。現在は浸食によってカルデラ地形は外見上わからなくなっているが、国内有数の大きさのカルデラで、今回「赤穂コールドロン」と名付けた。
地質調査は2011年度から3年間にわたり、地層の種類、堆積物の分布などを調べ、岩石の年代などを正確に測定した。
播州赤穂地域に広く分布する後期白亜紀(1億50万年前〜6,600万年前)の岩石は、35年前に刊行された地質図幅では「白亜紀から古第三紀(6,600万年前〜2,303万年前)に堆積した火砕岩に覆われている」とされていた。
今回の調査によって、後期白亜紀に大規模な噴火によってできた当時のカルデラが複数あり、これらをその後の火砕流堆積物が埋めていることが判明した。コールドロンは、カルデラを含む火山構造が陥没した地形の全体を指す。
特に赤穂市周辺のコールドロンの大きさは長径21kmもある大型で、熊本県・阿蘇カルデラ(長径25km)や鹿児島県・姶良(あいら)カルデラ(直径20km)に匹敵する国内でも最大クラスとわかった。
調査には放射性年代測定の「ウラン-鉛法」を使い、火山性鉱物ジルコン中のウランの同位体が鉛の同位体に崩壊する比率を調べ、火山が噴火した年代を高精度で特定した。
この地域には、後期白亜紀の火山活動によって形成されたわが国最大級のろう石鉱床や金鉱床がある。新たな鉱山開発の可能性が生まれると共に、地質学的に重要で興味深い遺産を自然公園として観光に生かす新たなジオパークとして役立つものと期待している。