世界初、ガスからクラックのない大型ダイヤモンドを合成―次世代パワーエレクトロニクスの開発に向け道:新エネルギー・産業技術総合開発機構/産業技術総合研究所
(2019年3月20日発表)
(国)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と(国)産業技術総合研究所は3月20日、世界で初めて、ガスからクラックのない1立方センチ級単結晶ダイヤモンドを合成することに成功したと発表した。内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として開発したもので、次世代パワーエレクトロニクスへの利用が期待される。
パワーエレクトロニクスは、電圧や電流の大きさを変えたり、電力の流れをコントロールしたりするエレクトロニクスのこと。今はシリコンが主に使われているが、今後の省エネルギー化や電気自動車などを支える重要な基盤技術であることからさらにこれを強化するため内閣府は次世代パワーエレクトロニクスをSIPのテーマの1つにしてシリコンに代わる新パワー半導体の時代を拓くことを目指している。
中でも新パワー半導体材料として注目しているのがダイヤモンド。ダイヤモンドは、耐電圧や熱伝導率などの物性値が半導体物質中最高の水準にあることから、パワー半導体として実用になれば広範な応用分野があるものと内閣府は見ている。
だが、そのためには、インチサイズ(1インチは2.54cm)のウエハーなどを作ることのできる大型のクラックの無い高品質の合成ダイヤモンドが要る。
今回の1立方センチ級単結晶ダイヤモンドの合成は、その実現に近づくもので、CVD法(気相合成法)に入る「マイクロ波プラズマCVD法」と呼ぶ方法を使って作った。
CVD法は、気相反応によって原料ガスを分解して基板などの上に目的とする物質を作る方法の総称で、マイクロ波プラズマCVD法はマイクロ波によってメタン、水素などからなる原料ガスをプラズマの状態にして基板上にダイヤモンドを堆積させる方式をいう。
産総研は、プレス発表したリリースに原料ガスの具体的な成分名やその混合割合、マイクロ波の強さ、ダイヤモンドの成長速度といった具体的な合成データを記していないが、照射するマイクロ波のパルス化や、結晶を保持する構造の最適化、原料ガスへの酸素の微量添加、などの改良を加えることによりクラックの入らない高品質ダイヤモンドの合成を実現した、といっている。
従来の方法では、ダイヤモンドの厚みが1mmにもならない段階でクラックが生じたが、研究グループは2~5mmの厚さまでクラックを発生させずに連続的に成長させ、クラックのない厚さ1cm、幅1cmの1立方センチ級単結晶ダイヤモンドを合成することに成功した。