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真核生物から初の多糖分解酵素―分子進化解明に手がかり:東京理科大学/農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2019年3月27日発表)

 東京理科大学と(国)農業・食品産業技術総合研究機構などの研究グループは327日、キノコやカビなどの仲間である糸状菌がβ-12-グルカンと呼ばれる多糖の分解酵素を分泌していることを発見、その化学構造を突き止めたと発表した。細菌などの原核生物からはこれまでも見つかっていたが、キノコや高等動物も含む真核生物では初めて。新しい酵素の発見や酵素の分子進化の解明に役立つという。

 東京理科大の田口速男教授と中島将博講師らが、農研機構のほか麻布大学、東京大学など5大学との共同研究で明らかにした。

 β-12-グルカンは単糖が複数結合した多糖類の一つ。一部の共生細菌や病原性細菌が宿主への共生や感染をする際に合成・分泌する物質だが、天然には希少な存在とされている。

 研究グループは今回、この多糖の分解酵素「β-12-グルカナーゼ」を真核生物である糸状菌の培養液から精製・単離することに成功した。さらにβ-12-グルカナーゼを詳しく解析、酵素として働く際に必要な分子の立体構造や触媒としての新しい特徴などを明らかにした。

 その結果、研究グループはβ-12-グルカナーゼを構成するアミノ酸配列や機能、立体構造から糖の加水分解酵素の新しいファミリーが創設できたとしている。β-12-グルカンの分解酵素は、これまで細菌などの原核生物からは生成・単離されており、一群の新しい糖加水分解酵素のファミリーの存在が確認されていた。

 今回、真核生物由来の酵素ファミリーの存在も確認されたことで、新酵素の発見に役立つという。また、原核生物と真核生物由来の酵素の間でどのように分子進化が起きたのかを解明するのにも新しい手がかりが得られる、と研究グループは期待している。