革新的機能の有機材料開発―シミュレーター群で効率化:産業技術総合研究所/先端素材高速開発技術研究組合
(2019年4月1日発表)
(国)産業技術総合研究所と先端素材高速開発技術研究組合は4月1日、革新的な機能を持つ有機・高分子材料の開発を効率化するマルチスケールシミュレーター群を開発したと発表した。原子・分子からマクロ構造のレベルまでコンピューターを用いた理論計算によって材料が持つ機能や性質を予測する。新機能性材料の開発が大幅に効率化できると期待している。
有機・高分子材料は、構成する原子や分子、結晶構造などが決まればミクロの世界を支配する量子力学や分子動力学、理論的な流体解析などの理論を用いて機能や物性を計算・予測できる。ただ、有機・高分子材料では計算の対象とする空間や時間が原子・分子か結晶なのかなどスケールによって計算手法が大きく変わり、一つのシミュレーターでカバーすることは難しかった。
そこで研究グループは、これまでに国内の大学、研究機関で開発された複数のシミュレーターの高速化などを進めるとともに、新たに開発したシミュレーターも加えて、9つの機能別シミュレーターからなるマルチスケールシミュレーター群を開発した。
このシミュレーター群の主な適用対象は有機・高分子機能材料で、半導体材料や高機能誘電材料、高性能高分子材料、機能性化成品、ナノカーボン材料など幅広い分野に利用できる。また、既存のシミュレーターでは難しかった材料の機能・物性も予測できるようにした。
材料開発は、これまで研究者の勘や経験に基づいて仮説を立て、実験による検証を繰り返して最適な構造や組成を決めることが多かった。これでは製品化までに長い時間と高いコストがかかるため、コンピューターを用いて幅広い空間・時間スケールで理論計算やシミュレーションが実現できる材料設計が求められていた。