東北の太平洋沿岸域が沈降するメカニズムを解明―海洋プレートの陸側への沈み込みを解析し明らかに:建築研究所ほか
(2019年4月5日発表)
(国)建築研究所、東京大学地震研究所、京都大学防災研究所の共同研究グループは4月5日、東北地方の太平洋沿岸域が沈降(ちんこう)するメカニズムをシミュレーションにより解明したと発表した。
沈降とは、隆起の反対で地面が低下する地殻変動のこと。宮城県の牡鹿(おしか)半島を中心とする太平洋沿岸域では、2011年の東北地方太平洋沖地震が起きる約100年前から年に3~4mmの速度で沈降が続いていたことが測地観測で観測されていた。
その沈降は、沈み込む太平洋側のプレート(岩板)が日本列島側のプレートを引きずり込むことによって生じていたと考えられている。
しかし、そのメカニズムは単純ではない。それを解明するためにこれまでも地球の構造を単純化してのシミュレーションは行なわれてきた。だが、地球の内部構造をどう仮定するかによって得られる結果が大きく異なってしまう問題があった。
研究グループは、大地震前になぜ東北地方沿岸域が速い速度で沈降し続けていたのかをより現実に近い地球内部構造を用いて明らかにすることを今回試みた。
研究では、これまで行われてきた様々な研究で得られた詳細な地球内部の温度構造などを元にして内部構造を考え約600年周期の東北地方太平洋沖の超巨大地震を想定して陸側プレートの変形をシミュレーションした。
その結果、海洋プレートによる陸側プレートの引きずり込みが数百年にも及ぶと、陸側プレートの下のマントルの高温部が水飴のように流動化するようになり、その上に横たわる陸側プレートがより引きずり込まれ易くなって沈降が生じることが分かった。
研究グループは、陸側プレートが引きずり込まれている期間が長いほどその反発で生じる海溝型地震の規模は大きくなるとし、「日本列島ではもう一カ所沿岸域が100年以上にわたり速い速度で沈降を続けている場所がある」と指摘。その場所として、北海道東部の十勝から根室地方にかけての太平洋沿岸域を挙げている。
研究グループは、その北海道東部太平洋沿岸域の沈降も「東北地方太平洋沿岸域で生じていた沈降と同様のメカニズムで生じていると考えられる」といっている。