全ての光を吸収する究極の暗黒シートを開発―シリコーンゴムの表面に光閉じ込め構造を構築し実現:産業技術総合研究所ほか
(2019年4月24日発表)
(国)産業技術総合研究所と(国)量子科学技術研究開発機構の研究グループは4月24日、可視光だけでなく紫外線や赤外線も全て吸収する究極の暗黒シートを開発したと発表した。美しい黒い材料としての利用や、熱赤外線の乱反射防止への活用など、幅広い応用が期待できという。
暗黒シートとしては可視光を99.9%以上吸収できるカーボンナノチューブ製の材料があるが、表面に触れると性能が損なわれるなど耐久性に乏しく、一般環境での利用は困難だった。
研究グループは今回、シリコーンゴムなどの表面に、あらゆる光をとらえて逃がさない光閉じ込め構造を形成し、柔軟で耐久性にも優れた究極の暗黒シートを作り出すことに成功した。
材料表面に設けられた微細な円錐状空洞構造に光が入ると、光は壁面で何度も反射を繰り返しながら最終的に反射率がゼロ近くまで低減する。ただ、この原理で100%近い光吸収率を達成するには、空洞壁面の傾斜を急峻にし、その表面をナノメートルレベルで滑らかにし、空洞構造のエッジを十分鋭くする必要がある。
こうした超精密な空洞構造は半導体の超微細加工技術を使っても実現できない。
そこで研究グループはサイクロトロン加速器から放出されるイオンビームを加工に用い、これに化学エッチング処理を組み合わせることによって微細加工を実現した。
加工基板として用いた樹脂は無色透明なので、樹脂に作製した微細空洞構造をシリコーンゴムの表面に転写し暗黒シートを得た。
作製したこの暗黒シートは、紫外線~可視光~赤外線の全域で99.5%以上の光を吸収する。特に熱赤外線に対しては99.9%以上という世界最高レベルの光吸収率を達成した。曲げても触っても、粘着テープを貼りつけたり剥がしたりしても性能は劣化せず、このような耐久性と極めて高い光吸収率を併せ持つ黒色素材は世界で初めてという。一般環境下での幅広い活用が期待されるとしている。