老朽インフラを効率よく検査できる高感度X線画像装置を開発―10cm厚のパイプ鉄板などをその場で非破壊検査:産業技術総合研究所
(2019年4月22日発表)
(国)産業技術総合研究所の放射線イメージング計測研究グループの藤原健研究員らは4月22日、産業インフラを効率的に検査できるデジタルX線イメージング装置を開発したと発表した。老朽化が進むプラントなどの構造物の劣化をいち早く見つけ、安全対策に活用するのが狙い。
高度経済成長期以降に作られた社会インフラの老朽化対策が大きな問題になっているが、中でも工場プラントの配管系には鉄の厚さが数cmから10cmのパイプなど肉厚の構造物が大量に使われている。
産総研はこうした構造物の内部を非破壊検査するためのデジタルX線イメージング法の開発に着手。2016年には高エネルギーX線源と、有感エリア(受光面積)が縦、横10cmで、厚さ7cmの鉄の透過撮影に成功した。さらに高感度で高精細、大面積化を進めてきた。
デジタルX線イメージング装置は、X線を検出するフラットパネル部(有感エリア)と、フラットパネルを制御するゲート制御部、デジタル回路部からできている。今回の改善ポイントは、フラットパネル部の微小電流の漏洩(ろうえい)防止や配線レイアウトの改善で低ノイズ化を図った。これで微弱なX線で180秒以上の長時間露光が実現し、高感度の画像を取得できるようになり、診断がしやすくなった。
有感エリアを43cm×35cmとこれまでの2倍に大面積化した。画素サイズを800万画素(139μm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m ))に微細化したことで解像度が向上した。X線照射後すぐにコンピューター上でデジタルX線画像を観察できた。消費電力は15W以下のためバッテリーでも動かせる。これによって化学プラントなどで多用される鉄製鋳造大型バルブでも一度に撮像できることを確かめた。
イメージング装置とX線源の間に1cm厚の鋼板を数枚置き、鋼板の間に鉛製の文字(産総研の英語名頭文字AIST)をはさんで撮影。1ショットのX線照射で8cmの鋼板を透過した鉛文字の画像を得た。
大型バルブやプラントの配管など、厚みのある金属部材の欠陥箇所を高い分解能で効率よく検査できるだけでなく、軽量でバッテリー駆動もできることから、自動検査ロボットなどに載せて距離の長い配管の検査が短時間で可能になるとみている。