石炭火力から天然ガス火力への転換「パリ協定」達成に寄与―段階的廃止に向けて追い風となる解析結果得る:国立環境研究所ほか
(2019年4月23日発表)
(国)国立環境研究所とノルウェー、英国の国際共同研究グループは4月23日、石炭火力発電から天然ガス火力発電への転換が「パリ協定」の目標を達成するのに有効であることが解析の結果分かったと発表した。
“脱石炭火力”は世界の流れ。研究グループは、石炭火力発電の段階的廃止(フェーズアウト)に向けて追い風になる分析結果が得られたといっている。
パリ協定は、温暖化を防ぐための世界的な取り組みで、世界の平均気温の上昇を産業革命前比で2℃未満に抑えることを目標とすると共に1.5℃以下に留めることを求めている。
このため、先進国・発展途上国共その目標達成に向けてのエネルギーシステムの再構築を求められており、一つの方向として石炭火力発電所をフェーズアウトして天然ガス火力発電所に転換することが考えられている。
天然ガスの燃焼で生じる温暖化の元凶物質CO2の量は、石炭の半分以下で、発電効率も良い。しかし、一方で様々な心配もある。天然ガスの主成分は気体のメタンであるため、採掘、輸送、貯蔵、燃焼などの各サプライチェーンで大気中に漏出(ろうしゅつ)する心配がある。例えば、近年米国では地下のシェール層(頁岩層:けつがんそう)の岩盤に人工的な割れ目を入れる水圧破砕法(フラッキング)による天然ガスの生産が急増しており、漏出が増えているのではないか心配されている。
こうしたことから、天然ガス発電でのメタンの漏出には大きな不確実性が伴い、そのために石炭に対する天然ガスの優位性を疑問視する向きもある。
今回の研究は、環境研の地球環境研究センターとノルウェー科学技術大学、英国レディング大学のグループが共同で行ったもので、そうした不確実性も考慮して世界4カ国の石炭及び天然ガス火力発電に伴う温室効果ガス、短寿命気候汚染物質の排出量を算出し、石炭から天然ガスへのエネルギー転換がパリ協定の目標達成に寄与するのかどうかを検証した。
研究では、先進国から米国とドイツ、途上国から中国とインドの計4カ国を選び、「ecoinventバージョン3.4」と呼ばれるデータベースを使いそれぞれの国の温室効果ガスや短寿命気候汚染物質の排出量算出を行なった。
その結果、それらの排出量は、国によらず石炭火力発電より天然ガス火力発電の方が大幅に少なく、CO2換算の排出量が長期的には4カ国ともに共半分以下にまで下がり、パリ協定の目標達成に寄与することが分かったという。